カンボジアに民主主義を根付かせる必要性があると訴えるデモ活動が19日、東京・銀座で行われた。かつて日本は率先してカンボジアの民主化を支援したが、同国では40年近く首相の座を維持したフン・セン上院議長の一族による事実上の独裁体制が続き、自由な言論活動や野党勢力の活動に対する締め付けが強まっている。 ■パリ和平協定から34年 「独裁政権のもと自由と民主主義が奪われている」 「カンボジア政府はパリ協定を守れ。政治犯を解放しろ」 在日カンボジア人や日本人支援者ら約100人は日本語とカンボジア語を交えて、こう訴えると休日の繁華街を練り歩いた。 カンボジアの内戦終結のため1991年10月に調印された「パリ和平協定」は戦後日本が初めて本格的に海外の紛争終結に関与した出来事として知られ、自由で公正な選挙の確保をうたう同協定の実現に向けて、デモの参加者は日本社会の理解を求めたい考えだ。 デモの様子は配信されておりSNSで拡散することで、カンボジア政府に圧力をかけたい狙いもある。 ■独裁国家に資金援助よいか カンボジアでは近年、野党党首の逮捕や政党解散、選挙の事実上の排除などが相次ぐ。フン・セン氏は首相に38年間在職し、2023年8月に長男のフン・マネット氏に首相の座を譲ったが、強権的な独裁体制は改善されていない。日本で暮らすカンボジアの民主デモ参加者も監視されるなど圧力を受けているという。 一方、国際協力機構(JICA)は今月13日、カンボジア政府と、水道事業の拡張などに向けて計444億円の円借款の供与で合意した。 デモで日本人支援者は「いま歩いているカンボジア人も命懸けだ。家族に危害を加えられる可能性もある」と訴え、「インフラ整備はありがたい。ただ、カンボジア政府は支援だけを受け取って、腐敗した独裁国家となっている。納得しますか」と訴えた。 ■デモ参加者の父は暴行死 参加者には前日、母国に残した父親(56)が死亡した知らせを受けた男性(30)もいた。父は殺人の嫌疑がかけられ、約11年前に刑務所に収容されたが、釈放される上での「賄賂」が払えず看守らによる暴行が繰り返されたという。大けがを負い、集中治療室に入ったが、そこでも賄賂を払えなかったため、無理やり刑務所に戻され、死亡したという。