アングル:米ロ首脳会談、EU加盟国ハンガリーで開催の波紋

Gergely Szakacs Lili Bayer [ブダペスト/ブリュッセル 17日 ロイター] – ロシアのプーチン大統領がトランプ米大統領との会談のためハンガリーに到着する光景は、プーチン氏を戦争犯罪者として孤立させようと努力してきたウクライナの同盟国である欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)にとって非常に気まずいものとなるだろう。 トランプ氏は16日、今後2週間以内にブダペストでプーチン氏と会談する可能性があると述べた。米国が巡航ミサイル「トマホーク」をウクライナに供与する可能性があるように思われたにもかかわらず、トランプ氏の対ロ姿勢がより融和的な調子に転じたのだ[]。 EUとNATOに加盟するハンガリーが首脳会談の開催地に選ばれたことは、計画が浮上したときと同じくらい外交官たちや専門家らを驚かせた。 ハンガリーは米国、英国、ロシアが1994年に「ブダペスト覚書」に署名した場所だ。ソ連崩壊後に残った核兵器をウクライナが放棄する見返りに、署名国はウクライナの安全を約束した。ウクライナの領土的な一体性を尊重するとも盛り込んだが、この誓約は2022年のロシアのウクライナ全面侵攻によって粉々に打ち砕かれた。 西欧のある高官は「EUとNATOにとって気まずいことだ」と語った。その上で「タイミングが全てだ。トマホーク供与の脅威が高まっていて、プーチン氏が突然会談を望んでいる。しかし、もしトランプ氏が成し遂げられることがあるならば、成し遂げるべきだ」と訴えた。 <オルバン氏、ロシアと良好な関係> ハンガリーのオルバン首相は長年にわたりモスクワとの関係を温め続けてきた。オルバン氏はハンガリーで民主主義が後退しているとEUが主張する状況を巡って、数年間にわたり対立を繰り返しており、EU内で嫌われ者の地位を確立している。 プーチン氏はウクライナから子どもを違法移送した罪で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているが、プーチン氏にとってこうした事情がブダペストで問題になると考える専門家たちはほとんどいない。 オルバン氏は今年4月、ガザの戦争犯罪容疑でICCから逮捕状が出ているイスラエルのネタニヤフ首相が訪問した際、ハンガリーがICCから脱退すると発表した。手続きはまだ完了していないため、正確に言えば、プーチン氏がブダペストを訪れれば逮捕されるはずだ。しかし、あるEU加盟国の外交官はロイターに対し「ハンガリーがプーチン氏を逮捕しなくても誰も驚かないだろう」と語った。 ハンガリーのシーヤールトー外相は17日、プーチン氏が首脳会談のために入国し、その後帰国できるようハンガリーが保証すると明らかにした。 <EUに対する象徴的打撃> レッド・スノー・コンサルティングの地政学アナリスト、ボトンド・フェレディ氏は首脳会談の開催地にブダペストを選んだことについて、プーチン氏が「一石数鳥」の成果を得られるだろうと述べた。 フェレディ氏は「一方では、プーチン氏はEU首脳が参加せずにEU加盟国内でウクライナ戦争を協議することになる」とした上で、「プーチン氏にとって、トルコや他の場所で首脳会談を開く場合と比べ、欧州に対して象徴的にはるかに強烈な打撃を与えることになる」と指摘した。 フェレディ氏はまた、今回の首脳会談がアラスカで開かれたトランプ氏とプーチン氏の会談に続いて、ウクライナのゼレンスキー大統領を2回連続で排除し、ハンガリーとウクライナの関係がさらに悪化する可能性があると語った。 ウクライナとハンガリーの関係はますます緊張の度を高めている。ゼレンスキー氏は9月、ハンガリーのドローンがウクライナ領空に侵入したと発言し、オルバン氏がウクライナは主権国家でないと反発した。 <総選挙を前に> オルバン氏はトランプ氏の熱烈な支持層「MAGA」運動を巡って国際的に最も知られた支持者の一人であり、移民や性的少数者(LGBTQ)の権利に対する強硬な姿勢や保守的なキリスト教的価値観を重視する態度によって、MAGA支持者から称賛を受けている。 トランプ氏は今月14日、オルバン氏が米国の要請を無視してロシア産原油の購入を続けているにもかかわらず「素晴らしい人物」であり「偉大な指導者」だと持ち上げた。 欧州の当局者らはオルバン氏が来年の総選挙を控え、米ロ両陣営の間の橋渡し役を務めるだろうと予想している。ポーランド大統領の外交政策顧問マルチン・プシダチ氏は「ハンガリー側は自国の役割を重要な仲介役として演出しようとするだろう」との見方を示した。 専門家らは国内問題が国政選挙の結果を左右するとしつつも、今回の首脳会談について、戦争を終わらせるためにロシアとの関係が必要だとのオルバン氏の主張を後押しする可能性があるとみている。 ハンガリーのシンクタンク、センター・フォー・フェア・ポリティカル・アナリシスのゾルタン・ノヴァーク氏は「もし何らかの合意が成立すれば、オルバン氏の和平という物語を後付けで正当化するだろう」と予想する。

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