昨年「中国の英雄と殉教者を侮辱した」容疑で逮捕されたアーティストデュオ、ガオ兄弟(高氏兄弟)のガオ・ジェン。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが10月初旬に発表した声明によれば、彼は依然として中国当局に拘束されており、健康状態が悪化しているという。 同団体は声明において、ガオが先月に失神したことを報告し、「根拠のない告発」を取り下げるよう中国政府に求めている。 兄のガオ・チアンとともにガオ・ジェンは、共産主義の正統性を問う政治的な彫刻や絵画、パフォーマンスを手がけ、国際的な注目を集める一方で物議も醸していた。作品は中国共産党の創始者である毛沢東、1960年代の文化大革命、1989年の天安門事件などを題材としていた。 中国政府は、2018年に可決され2021年に改正された「英雄烈士保護法」に基づいてガオを逮捕。この法律は「中国の殉教者と英雄」に対する侮辱を刑事犯罪とし、最高3年の懲役刑を科すものだ。制定・改正の背景には、国家主席の習近平による異論の封じ込めと、共産党イデオロギーの強化路線の一環となっている。 政府が問題視したのは、2005〜2009年の間に制作された作品群で、中国北部・三河市のスタジオから118点が押収された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これらの作品が習近平が国家主席に就任する2013年よりも前に作られた作品であり、英雄烈士保護法および改正法が施行される前であったと指摘。ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア担当ディレクター、エレイン・ピアソンは次のような声明を発表した。 「中国当局によるガオ・ジェンの訴追は、彼の基本的人権を侵害するだけでなく、中国が歩んできた痛ましい過去へ後退していることを意味する。毛沢東が残した残虐な歴史を批判することはかつて容認されていたが、習近平国家主席がイデオロギー統制を強化する中で、いまやタブーとなっているようだ」 ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、ガオの裁判の日程は発表されていないが、今後数カ月のうちに決まる見込みだと報告している。ガオは動脈硬化の可能性があり、「脳卒中の前兆」があるかもしれないという医師からの診断を家族は同団体に語った。彼はまた、慢性的な腰痛を抱えており、現在は広さ40平方メートルの拘置房にガオを含む14人の収容者とともに生活している。こうした状況にありながらも、ガオの医療保釈申請は却下された。 ピアソンはまた、ガオが中国の過去に焦点を当てたことで、長期の収監に直面していると指摘し、中国政府に対して「過去の抑圧的な慣行からの脱却」と告発の取り下げ、そして彼の即時釈放を求めた。 裁判が延期されている理由は明らかにされていない。だが、アート・ニュースペーパーによれば、ガオがアメリカの永住権保持者であり、アメリカ市民である息子もこの件の影響で帰国できない状況にあるという。このため、事件の背景には米中関係が影を落としている可能性も指摘されている。家族は「アメリカ政府の継続的な外交努力を通じて、ガオが間もなく家族と再会し、アメリカに戻れることを期待している」と、同紙の取材に応じた匿名の情報筋は述べた。 ガオは弁護士を通じて8月にアイ・ウェイウェイ(艾未未)に手紙を送っている。アイは2011年に国家権力の転覆を扇動したとして81日間拘束された経験があり、釈放後もパスポートを没収され、現在はヨーロッパで亡命生活を送っている。ガオは自身の状況を「あなたが何年も前に経験した拘束と同じことが繰り返されているように感じる」とアイに説明している。しかし、アイが逮捕された当時と比較して、国際的な抗議の声はほとんど上がっておらず、海外メディアの報道は「空虚な芝居」にすぎないと指摘した。ガオの手紙はこう続く。 「私は今、15人を収容する30数平方メートルの拘置房の窓辺に座ってこの手紙を書いている。大音量のテレビの音と、他の収容者の声が響き渡っているこの部屋で。この喧騒の中、私の思考はあなたの過去と私の現在を隔てる時間と空間を漂っている。まるで遠い昔に起きた出来事を語っているかのように、非現実的な感覚を覚える。だが、私の目の前にあるすべては紛れもなく現実なのだ」