妻の首を絞めて殺害しようとしたとして、殺人未遂の罪に問われている男の裁判員裁判。公判の中で明らかになったのは、実母と妻のW介護の中で疲弊し、追いつめられていった男の姿だった。本記事では、男が語った犯行の瞬間、周囲に頼れなかったわけ、検察側の求刑を記す。介護の末の殺人未遂に、裁判員たちはどんな量刑を下すのか。 【前編は下記の関連記事から】実母と認知症の妻 24時間W介護生活 妻の首を絞めた71歳夫 一緒に算数ドリル…"愛妻家"が豹変した理由 ■「現状から逃げたい」 トイレから出た妻の背後に立ち、無言で首に紐を 犯行日となった2025年4月7日。 この日も、妻がたびたびトイレに行くなどしたことで男は眠れずに朝を迎えた。そして、介護から解放されたいとの考えから妻の殺害を決意した。 被告の男(71): 「(妻や親の介護・家の問題などが)頭にあり、体調と精神面の不調もあって、現状から逃れたい、時間の余裕が欲しい、と思いました」 長女が帰省していた自宅から、妻を実家に連れ出した。母親は入院中で実家には誰もいない。 被告の男: 「実家の物置でビニール紐を見つけました。トイレから出てきた妻の背後に立ち、無言で首に紐を巻きました」 「死ぬかも、というくらいの力で、力いっぱい絞めました」 被告人質問で、男は淡々と、しかし生々しく当時の状況を語っていった。 一度首を絞めたもののうまくいかなかったことから、男は脱衣所へ行き、自分の首に紐を巻いて「絞め方」を試した。 再び妻のもとへ戻り、さらに強く絞め上げたその時、妻が口から泡を吹き始めたので手を緩めた。 ■自分も死のう 廊下で動いた妻の姿 「亡くなったかもしれない……」 男は自分も死のうと思い、脱衣所に行って首にひもをかけた。 しかしうまくいかない。 その時、廊下で倒れている妻が動くのが見えた。我に返った。 被告の男: 「正気に戻ったのだと思います。助けないと、と思いました」 長女に電話をかけ、さらに自ら119番通報した。 逮捕され拘留された時の気持ちを、男はこう語った。