2023年に経営破綻した運送業アペックス(金沢市)の代表らが北國銀行から約1億円をだまし取ったとされる事件で、詐欺容疑で逮捕された元代表取締役の沖野幸一容疑者(61)=内灘町白帆台1丁目=が無実を主張していることが21日、分かった。金沢地裁であった勾留理由開示手続きで代理人弁護士が明らかにした。 勾留理由開示は、容疑者や弁護人らの請求に基づき、裁判所が勾留を認めた理由を明らかにする手続きで、公開の法廷で行われる。沖野容疑者の代理人弁護士である内田清隆弁護士が17日、勾留を不服として金沢地裁に理由開示を求めた。21日に開かれた手続きでは、沖野容疑者も出廷した。 内田弁護士によると、沖野容疑者は、元総務部長の嶋田一彦容疑者(60)=同町大清台、業務上横領の罪で公判中=と共謀の上、借入額を実際より10億円少なく偽った決算書を北國銀行に提出し、融資を受けたとして逮捕された。 内田弁護士は意見陳述で、アペックスには約20億円の使途不明金があり、嶋田容疑者が横領した上で発覚を免れるため、うその決算書を沖野容疑者にも提出していたと主張。沖野容疑者は「粉飾を知らなかった」として関与を否定し、無実と訴えた。 赤堀秀樹裁判官は勾留を認めた理由について「犯罪を犯したと認められる事情があり、罪証隠滅と逃亡の疑いがあると認めた」と述べた。 ●元総務部長は旧石川銀行員 嶋田容疑者が旧石川銀行の行員だったことが21日までに、関係者への取材で分かった。元銀行員の知識を生かして粉飾決算書を作り、北國銀行の審査を通過していた可能性がある。嶋田容疑者はアペックスから現金計735万円を着服したとして、業務上横領の罪に問われており、10月23日に金沢地裁で開かれた初公判で起訴内容を認めている。