防火基準満たぬ改修工事の防護ネット、巨大火柱に拍車か 香港大規模火災、被害は最悪規模

香港北部・大埔の高層住宅群の大規模火災は、少なくとも55人が死亡する大惨事となった。ロイター通信によると、死者は1996年に香港・九竜地区で41人が死亡した商業ビル火災を上回り、過去最悪規模の被害となった。改修工事用に外壁を覆っていた防護ネットが防火基準に満たない材質で、火が急速に燃え広がったとみられる。 ■築40年超、高齢者が多数居住 夜空に鳴り響く爆竹のような爆発音、1階から高層階まで駆け上がる巨大な火柱-。香港メディアは夜通し、壮絶な火災現場の様子を伝えた。 「まだ妻が中にいるんだ」。家族の安否が分からず、燃えさかる高層住宅を前に泣き叫ぶ男性の姿もあった。 火災は現地時間26日午後3時ごろ、いずれも30階建て以上で計8棟ある高層住宅群の1棟で発生。強風にあおられ、瞬く間に近接する6棟に燃え広がった。高層階からの避難が間に合わなかった住民もいたもようだ。 築40年超の高層住宅群では約2千戸に4千人以上が暮らし、英BBC放送によると、住民の約4割が65歳以上の高齢者だった。昨年7月からは改修工事が始まり、周囲は緑色の防護ネットに覆われていた。 ■足場は竹…廃止措置間に合わず 火災が短時間で拡大した背景として、業者が耐火性の低い安価な資材を使う「手抜き工事」をしていた可能性が指摘されている。SNSでは、火災発生直後に炎がネットを伝って低層階から高層階まで燃え広がり、建物全体を一気に包み込む映像も確認できる。 警察は過失致死容疑で工事を担った建設会社幹部ら3人を逮捕。ネットが防火基準を満たしておらず、建物の窓の外側に耐火性の低い発泡シートが使われていたとして、これらが火災の拡大を招いたとの見方を示した。 香港では工事現場の足場に金属ではなく竹を使うのが一般的だ。今回の現場も竹で足場が組まれており、火災拡大の一因となった可能性がある。香港当局は3月、安全性への懸念から竹の足場を段階的に廃止する措置を始めていた。 SNSには火災前に竹の足場で作業員が喫煙する動画もある。火災発生の約10時間後にようやく会見を開いた香港政府トップ、李家超行政長官に批判の声も上がっている。(桑村朋)

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