香港高層住宅火災、生存者が疑問の声 以前から建設資材の危険性に懸念 警報器鳴らなかったとの証言も

香港(CNN) 炎が燃え広がり、隣接する建物をのみ込む30分の間、ワンさんは自宅でテレビを見ていた。危険がこちらへ迫ってくるのにも気付かず。外で騒ぎが起こり、遠くでサイレンが鳴り響いた時でさえ、香港にはよくある騒がしい午後だと片付けていた。 助けを求める人々の叫び声が聞こえて初めて、ワンさんは立ち上がり、8階のアパートの窓から外を見下ろした。「窓を開けた瞬間、煙が見えた」。CNNにそう語った。 日時は26日の午後3時15分。香港の王福院公営住宅団地を構成する8棟の高層住宅のうち1棟で火災が激しくなっていることに目撃者が気付いてから、30分が経過していた。 消防隊が現場に到着したが、火はすでに他の棟に燃え移っていた。それらの棟はすべて修繕中で、伝統的な建設資材である竹の足場が組まれていた。炎が31階建ての高層建築の上方へと燃え上がる中、焼けた棒状の資材が外壁から崩れ落ちていた。 CNNに姓のみを告げたワンさんは、2匹の犬と財布をつかみ、ガスの臭いが漂う非常階段を駆け下りた。避難からわずか数分後、火災の警戒レベルは5段階で2番目に高い4に設定された。 その後数時間、当該の高層住宅群が炎に包まれていく様子を人々は恐怖に震えながら見守った。住宅群には4000人以上が暮らし、その多くが高齢者だ。仕事や学校から帰宅する人々は、ブリーフケースやリュックサックを抱え、日の光が弱まる中、揺れ動くオレンジ色の炎を見つめていた。 日暮れまでには、被害の規模が明らかになりつつあった。午後6時前後、火災の警戒レベルは最大の5に設定された。コミュニティーチャットグループには、愛する家族の居場所を必死で確認するメッセージが多数寄せられた。ニュースで流れた映像に、香港中が衝撃を受けた。香港は裕福な都市であり、建物の安全性に関しては高い実績を誇っていた。 火災は数時間のうちに高層住宅群8棟中7棟にまで広がった。この速度に住民たちは愕然(がくぜん)としつつ、惨事を未然に防ぐことができなかったのかどうかについて重大な疑問の声を上げている。具体的には建設工事の安全性の問題や火災報知器が鳴らなかったこと、高額な修繕工事の計画などに対する言及がみられる。 今回の火災を巡ってはこれまでに3人が逮捕され、刑事事件と汚職捜査が開始された。香港政府に対し、疑問への回答を求める世論の圧力が高まっている。 緊急避難所で一夜を過ごした後、共に40代のワンさんと妻は他の数百人の住民と共に必死の思いで新たな情報が届くのを待った。 避難所に改装されたスポーツセンターで、ボランティアや職員が食べ物や飲み物を配る中、ワンさんはCNNの取材に答えた。 「帰る家がない」「全てを失った。着るものさえない」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加