(CNN) ブラジルのジャイル・ボルソナーロ前大統領が映画館に現れる。 文字通りの意味ではない。本人は現在、禁錮27年の刑で服役中だ。再選を目指した2022年の大統領選に敗れた後も権力の座にとどまるため、クーデターを企てたとの罪に問われた。しかし、ボルソナーロ氏の息子たちや政界の盟友らがソーシャルメディアに投稿した内容によると、同氏の経歴を描いた新作映画が制作中だという。 「ダーク・ホース」と題されたこの映画の主演は、米国人俳優のジム・カビーゼル。保守派の活動家でもあるカビーゼルは、メル・ギブソンが監督した04年の映画「パッション」でイエス・キリストを演じたことでも知られる。 映画の公式インスタグラムアカウントに最近投稿された制作中の画像には、カビーゼルがボルソナーロ氏になりきった姿が写っている。そこにはボルソナーロ氏が選挙運動中に刃物で刺された18年の集会を再現する様子も含まれる。 当該の映画は、ボルソナーロ氏が服役を開始してから数週間後に報じられた。捜査官らによれば、上記のクーデター未遂は同氏の大統領選敗北直後に始まり、首都で支持者らによる暴動を引き起こした。当時の状況は米国で21年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件を彷彿(ほうふつ)とさせた。 「ダーク・ホース」は、ボルソナーロ氏の側近や家族から全面的な支持を得ているようだ。前大統領の息子たちはソーシャルメディアでこの映画を称賛する投稿をしている。脚本はブラジルの文化長官を務めたマリオ・フリアス氏が執筆した。CNNはフリアス氏にコメントを求めた。 現在国会議員であるフリアス氏は、政界入り前に数々のテレビドラマに出演した経歴を持つ。今週、ブラジルの保守系ニュースサイトの取材に答え、「ダーク・ホース」について、潜在的な視聴者層を拡大するため全編英語で撮影されたと語った。 フリアス氏は7日、自身とカビーゼル、ボルソナーロ氏の息子カルロス氏が「ダーク・ホース」のセット上でボルソナーロ氏のために祈る動画を投稿した。 カルロス氏は同日の自身の投稿で、カビーゼルに対し映画出演への感謝を表明した。 カビーゼルが映画で右派の人物を演じるのは今回が初めてではない。23年には映画「サウンド・オブ・フリーダム」で物議を醸す活動家ティム・バラード氏を演じた。同作は公開当時、Qアノンの陰謀論を助長しているとして広く批判された。カビーゼル自身は、この映画とQアノンとの関係を一切否定している。CNNはカビーゼルにコメントを求めている。 カビーゼルはまた、トランプ米大統領を熱烈に支持しており、24年大統領選での支持表明ではトランプ氏を「新たなモーセ」と呼んでいた。 トランプ氏はボルソナーロ氏の逮捕と訴追の経緯を熱心に追っており、自身の政治的盟友に対する「魔女狩り」への罰として、一時的にブラジルの輸出品に高関税を課す措置まで講じた。