「権力独占」を狙った尹前大統領、就任当初から戒厳を計画

内乱・外患行為の真相究明のために発足したチョ・ウンソク特別検察官(特検)チームが15日に発表した9ページの最終捜査結果内容を一言で要約すると、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が2023年10月以前から権力独占・維持を目的に非常戒厳を準備した」といったものだ。1月に内乱首謀容疑で検察が拘束起訴した尹前大統領の公訴状には、昨年3月頃から「国政運営の困難」などを理由に非常戒厳の議論および施行が行われたと記載されているが、特検チームの捜査を通じて戒厳準備時期と目的の実体がもう少し具体的かつ幅広く明らかになったのだ。特検チームは、尹前大統領など内乱加担者の裁判状況などを考慮し、今後、公訴状の変更に乗り出す計画だ。 特検チームは、尹前大統領による大統領室と官邸の移転を戒厳準備に向けた出発点と捉えた。尹前大統領は就任と同時に、大統領室をソウル龍山(ヨンサン)米軍基地内の合同参謀本部庁舎のすぐ隣の国防部庁舎に、大統領官邸を漢南洞(ハンナムドン)に移転した。チョ・ウンソク特検は「大統領が軍指揮部とともに軍基地内に位置するようになり、大統領と警護処長の近くに国防部長官と合同参謀議長公館など主要軍指揮部の公館が位置したことで、大統領と軍が密着する条件が作られた」と説明した。 特検チームは戒厳準備が行われた時期が2023年10月以前だと判断した。特検チームが戒厳準備着手の最小基準時期を2023年10月とした決定的な手掛かりは、「戒厳の秘線策士」と疑われるノ・サンウォン元情報司令官の手帳のメモだった。防諜司令官と陸軍参謀総長、地上作戦司令官など2023年10月に行われた軍人事の内容が、それ以前に作成されたノ元前司令官の手帳メモと一致したのだ。さらに、軍人事直前に戒厳時期を翌年の総選挙の前と後、いつ行うかを検討した情況まで把握した特検チームは、尹前大統領が「戒厳用の人事」を行ったと判断した。 尹前大統領が初めて戒厳を決意した時期を特定することはできなかったが、特検チームは2023年10月以前にも尹前大統領が戒厳を宣布する兆候が数回現れた事実を把握した。特検チームは2022年7~8月「尹前大統領が次の総選挙以後、戒厳を計画しているという話を聞いた」という元情報・捜査機関高官の陳述と、2022年11月25日に尹前大統領が(当時与党の)「国民の力」指導部との夕食会で、「(大統領には)非常大権がある。銃殺されることがあっても一掃する」とし、政治的反対勢力への敵対感を示した事実を確認した。その延長線上で、2024年7月にも尹前大統領がNATO首脳会議への出席後に訪問したハワイで、カン・ホピル合同参謀次長に「ハン・ドンフンはアカだ。軍が参加すべきではないか」と述べ、ハン前国民の力代表に対する敵愾心を示す一方、戒厳の必要性を訴えたと特検チームは明らかにした。 特検チームは、検察の内乱控訴状で事実上空白になっていた戒厳の最終目的を「政治的反対勢力をなくし、権力の独占・維持するため」と明らかにした。尹前大統領が行政権力に続き軍を利用した戒厳宣言で立法権と司法権まで握り、事実上の権力独占に乗り出したという意味だ。特検チームは立法権の掌握を目指した根拠として、戒厳当時、尹錫悦政権の国務委員などが受け取った各種指示文書とノ元司令官の手帳メモなどを挙げた。当時、チェ・サンモク前経済副首相兼企画財政部長官は、大統領室から「国会への資金の遮断、国家非常立法機構の予算編成」などの内容が書かれた文書を受け取っており、ノ元司令官の手帳には「次期大統領選挙に備え、すべての左派勢力の崩壊」、「憲法改正(再選~3選)」などと書かれていた。 特検チームは、戒厳当時、情報司令部要員が野球バットなどを用意し、中央選挙管理委員会の職員を拷問しようとした理由も、国会機能の停止を狙った名目作りのためと把握した。彼らは選管委の職員たちから「2024年の総選挙が不正選挙だった」という虚偽の自白を得た後、「国会機能停止→非常立法機構の設置」を計画した。パク・チヨン特検補は、「(政治家の)逮捕に成功し、操作を拷問を通じて不正選挙で(結果を)捏造したことをを明らかにし、全斗煥(チョン・ドゥファン)時代、(国会の代わりの役割を果たしていた)国家保衛立法会議と類似したもの(の設置)を構想していたようだ」と説明した。 特検チームはこのような構想を謀議した内乱加担者らが「戦時・事変など」実際の戒厳宣言要件を満たすため、北朝鮮の挑発を誘導したが、北朝鮮が軍事的に対応しなかったため失敗しに終わり、ついに戒厳宣言に踏み切ったという結論に至った。チョ・ウンソク特検は「尹前大統領らは国会で行われる政治活動を内乱を画策する『反国家行為』などとみなし、戒厳を宣布した」と述べた。 カン・ジェグ記者 (お問い合わせ [email protected] )

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