【判決】「性欲のために被害者の人格を無視」同じ女子高生に10ヵ月痴漢し続けた男に下された“裁き”

「被害者の下着の中に手を入れ、性的暴行を加えることを目的として、被害者に対する痴漢を行っていました」 約10ヵ月間にわたり、電車内で女子高生Aさん(当時15歳)に対し痴漢行為に及んだうえ、性的暴行を加えた千葉県市川市在住の元会社員・細矢武志被告(39)は取り調べのなかで、当時の心情をこのように説明したという。 Aさんに対する不同意性交等と東京都迷惑防止条例違反の2つの罪に問われた細矢被告に、12月12日、東京地裁で、判決が下された。 上下黒のスーツに白いシャツ、頭を短く刈り上げた細矢被告は、入廷すると、傍聴席のいちばん前に座っていた同棲中の女性を見つめた後、被告人席に着いた。表情はこわばり、明らかに緊張しているのが見て取れる様子だった。 そんな細矢被告に対して中川正隆裁判長は、「性欲を満たすために被害者の人格を無視し、自己中心的に犯行を繰り返した被告人の意思決定は、強い非難に値する」などとして、「拘禁刑4年(求刑6年)」を言い渡したのだった。 ’24年8月ごろから始まった細矢被告のAさんに対する痴漢行為が発覚したのは、Aさんが6月16日、友人とともに警視庁深川署を訪れ、「昨年8月初旬ごろから地下鉄の車内で週に2~3回、同じ男に体を触られ続けている。ずっと我慢していた」と相談したことからだった。18日に捜査員がAさんと地下鉄に同乗して警戒していたところに細矢被告が痴漢行為をしたため、東京都迷惑防止条例違反で現行犯逮捕した。 その後の捜査で、Aさんに性的暴行を加えていたことも発覚。深川署は7月1日に、不同意性交等の疑いで細矢被告を再逮捕した。 ◆「彼女に雰囲気が似ていたから」 細矢被告のAさんに対する犯行は執拗なものだった。 駅のホームで待ち伏せし、Aさんの姿を確認すると同じ車両に乗り込み、背後に立って痴漢行為に及ぶ。日によってはAさんが電車を乗り換えても追いかけ、横に座って体を触ったこともあったという。そうやって痴漢行為を繰り返すうちに、いつしか性的暴行を加えようと暗い欲望を膨らませていったようだ。細矢被告は取り調べのなか、当時の心情を冒頭のように説明したあと、こう供述していた。 「被害者が知らない人から痴漢をされることに同意しているとは思っていなかった。しかし、触られたくないと思っていようが、かまわないという気持ちで、自分の性欲を満たすことを優先して犯行に及んでいました」 なぜ細矢被告はここまでAさんに執着したのか。 公判で明かされた犯行動機は、当時、関係がうまくいっていなかった同棲中の女性にAさんが似ていたという、あまりにも身勝手なものだった。細矢被告は弁護人の「なぜAさんだけを狙ったのか」という質問にこう答えている。 「(同棲していた)彼女とのちょっとしたすれ違いからセックスレスになって、欲求不満な状態になっていました。被害者さんが、彼女に雰囲気が似ていて、彼女との欲求不満を満たすために、被害者さんだけに加害行為をしていました」 細矢被告によると、職場での異動による慣れない仕事や家族との関係からくる悩みなど、たまったストレスも犯行に至った原因だという。 ◆「これ以上悲しい思いをする人を出したくない」 しかし、細矢被告は、’08年と’13年にも、電車内で未成年者へ痴漢行為に及び、迷惑防止条例違反で逮捕されて罰金刑を受けている。この2回の逮捕は父親だけが知るところで、周囲にはバレなかったという。そのため、「今回の逮捕まで、自分を見つめ直すタイミングがなかった」と細矢被告は主張していた。 今回の事件で自分を見つめ直すために心理療法士のカウンセリングを受け、自身に「痴漢という性癖」があると知ったといい、一日も早く治療を始めたいのだと、検察官に大声で訴える場面もあった。 「早く、早くその治療を受けたい。治療計画のなかにも、そういう変わりたい意識が高い段階で受けたほうが効果が高いというふうに書いてありました。もう本当に二度と、こういうことをしたくないので、いち早く治療を受けたいです」 検察官が「社会内で更生したいということですか」と質問すると、「それが叶うのであれば」と口ごもり、実刑判決を受けた場合は、服役後に治療を始めると約束したのだった。 そして下されたのは実刑判決だった。 中川裁判長が「以上です」と閉廷を告げると、同棲中の女性や親族、友人が法廷内と傍聴席を隔てる柵のところに集まる。目を赤くした友人たちが見守るなか、細矢被告は職員に手錠をかけられると涙を堪えるように顔をゆがめ、友人たちを見つめたまま退廷したのだった。 同棲中の女性は、今後、細矢被告を監督し更生を支えると、身元引受人になっている。そんな彼女のことを、細矢被告はこのように述べていた。 「同棲中の彼女の存在がとても大きくて、もう絶対、悲しい思いをさせたくないし、お恥ずかしい話ですが、被害者さんの気持ちも初めて考えました。もうこれ以上、悲しい思いをする人を出したくないと思います」 逮捕され、周りの人たちを悲しませて初めて、被害者が受けた恐怖や恥辱に思いが至ったのだろうか。 二度の罰金刑でも痴漢行為を止められず、より悪質な犯行に走ったあげく実刑となった細矢被告。 控訴しなければ、今後服役することとなるが、刑務所生活を経て今度こそ、「誰も悲しませない」人間になることができるだろうか。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良

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