【2025年に世界が注目した日本人100】作家部門を発表!「国内外の読者を惹きつける要素をすべて備えている」と絶賛された柚木麻子ほか

2025年に世界が注目した日本人「作家部門」 1 柚木麻子 2024年に英訳版が刊行された柚木麻子の『BUTTER』。同年、英国の大手書店チェーンが選ぶ「ウォーターストーンズ・ブック・オブ・ザ・イヤー2024」を受賞し、2025年には英国の文学賞「ブリティッシュ・ブック・アワード」のデビュー・フィクション部門にも輝いた。国際的な注目が高まるなか、柚木が英国やインド、香港など各国を訪れたことも報じられている。 世界35ヵ国以上で翻訳が進められている『BUTTER』は、マッチングサイトで知り合った3人の男性を殺害した罪で死刑判決を受けた、木嶋佳苗による「婚活殺人事件」から着想を得て執筆された作品だ。主人公は、週刊誌記者の町田里佳。結婚詐欺の末に3人の男性を殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子を取材するなか、町田は次第に、「食」に強くこだわる梶井に感化されてゆく。 オックスフォード大学の犯罪研究者は、『BUTTER』について「日本社会に蔓延する肥満恐怖症や性差別主義をも暴き出している」と解説している。また、インド紙「インディアン・エクスプレス」は、「日本の女性たちにおける食事や身体との関係、そして同調圧力という複雑な構造に光を当てている」と評価し、こうしたテーマの普遍性が多くの読者の共感を呼んでいるのだろうと指摘した。 さらに、インドのベンガルールでおこなわれたパネルディスカッションでは、「柚木のサインを求めて若い女性たちがひっきりなしに訪れ、柚木が立ち寄った書店には多くの若者が集まっていた」と、その人気ぶりを伝えている。 香港誌「タトラー・アジア」は、男性作家が国際的な脚光を浴びがちだった日本現代文学の状況を、「柚木麻子とベストセラー小説『BUTTER』が一変させた」と評し、同作の魅力を次のように紹介している。 「社会問題、日本の料理、そして実際に起きた犯罪を探究する柚木の小説は、国内外の読者を惹きつける要素をすべて備えている。とりわけ、作品全体に散りばめられた鋭くウィットに富んだ観察眼が、その魅力をいっそう際立たせている。町田との初対面で、梶井はこう語る──『許せないものが二つだけある。フェミニストとマーガリンです』」 また同誌の取材に対し、柚木は日本国内外における作品の捉えられかたの違いについて、こう答えている。 「『BUTTER』は日本でフェミニスト小説として売り出されたことはありませんが、海外ではそう扱われています。驚くほど違うのです。これは私にとって大きな発見でした」 『BUTTER』は、英紙「タイムズ」が選ぶ「2025年のベスト・ペーパーバック書籍31選」に選出された。また、北アイルランド紙「ザ・アイリッシュ・ニュース」は、2026年に読むべき一冊として、柚木の『ナイルパーチの女子会』を挙げている。 2 雨穴 『変な絵』に続き、『変な家』の英語版・フランス語版が発売されたホラー作家・雨穴は、その謎めいた素性も相まって海外メディアから大きな注目を集めた。 英紙「デイリー・テレグラフ」は、雨穴へのインタビュー記事で「『変な絵』は楽しい気持ち悪さを感じさせてくれる本。雨穴には、物語内で起きている実際の出来事を完全には説明しないことで、読者の不安を煽る技術がある」と伝える。 仏紙「フィガロ」は『変な家』をこう評する。「ときに読者を困惑させながら、わくわくするような謎を考案する才能は疑いようがない。画像と文章、先祖伝来の伝統、現代性、分析、そして奔放な想像力が入り混じった世界を創り出した」 3 小川洋子 すでに『薬指の標本』や『密やかな結晶』がフランスで発売されている小川洋子の小説『掌に眠る舞台』のフランス語版が、2025年4月に刊行。8つの短編小説からなる同作について仏紙「ル・モンド」は、「悪戯っぽさと味わい深いエスプリを込めて描く、怪奇な光景に満ちている」と紹介する。 小川の文章は「一見シンプルで短く、簡潔で文字通りの意味を持つ。しかし、物語の展開のなかで突然、非現実的な世界へと滑り込む瞬間が現れる」と説明。「これらの素晴らしい短編小説を読み終えた後、私たちは自分の悪夢をもう少し優しく受け止めたい気持ちになる」

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