小児性愛障害の男性「取り返しのつかないことをした」きっかけは「虐待」と「性への依存」 いま実名で語る理由

加藤孝さん(63)は、男児への性加害未遂で20数年前に逮捕され、「小児性愛障害」の診断を受けた。逮捕されるまで加害意識はなく、自らが抱える「『認知のゆがみ』に気が付けなかった。加藤さんはなぜ「歪んだ」のか。なぜ、長く自覚することができなかったのか(全2回の2回目)。 * * * ■取り返しのつかないことをした 「私がしてきたことは、どんな原因や背景があったとしても、決して許されることではありません。取り返しのつかない、申し訳ないことをしました」 加藤さんは、そう前置きしてから、幼少期の経験を語りだした。 超のつく名門国立大学の学生だった母は、在学中に同じ大学の男性と交際し、突然、望まない妊娠をした。男性に結婚の意思はなかった。母は、出産するか迷った。そのうちに産む以外の選択肢がない時期に入り、シングルマザーになった。 その赤ちゃんが加藤さんだ。1962年。シングルマザーという言葉もおそらくなかった時代で、将来を嘱望された女子大学生としては異例の選択だっただろう。 しばらくは母の実家で親戚たちと一緒に暮らした。おぼろげな記憶だが、みんなが遊んでくれて楽しかった。 だが、加藤さんが3歳になったころ、母は大学の先輩にあたる男性と結婚した。実家を出て、養父と母との3人暮らしが突然始まった。 ■「あんたのせいでケンカしてるのよ!」 加藤さんの脳裏に今でも焼きつくのは、毎日のように大げんかする母と養父の姿だ。母はいつもイライラした様子で、大声で怒鳴り散らす。その声が、小さな一軒家に響き渡る。 「どうしてケンカするの?」 そんなことを聞いた加藤さんに、母は怒鳴った。 「あんたのせいでケンカしてるのよ!」 言葉による「虐待」。心の傷は、今も残っているという。 妹が生まれると、疎外感はさらに強くなった。今振り返ればだが、「母にも養父にも、安心感が持てなかった」のだと思う。子どもながらに、いつもモヤモヤした感情を抱えていたという。 ■5歳でマスターベーション そんな5歳のころ。初めてマスターベーションをした。行為をするには幼すぎる。なぜできたのか、きっかけは何だったのかも思い出せない。 ただひとつ覚えているのは、気持ちが良くて、その瞬間は抱えていたモヤモヤが消えてくれたことだった。 「気持ちが良くて、自分のモヤモヤを消してくれる。だから、他の人にしてあげたらきっと喜んでくれる。他の人にもしてあげたい。そんな『認知の歪み』が幼少期に芽生えたのではないかと今では思います」 虐待を受けたことが加害行為の言い訳にはならない。だが、自分はいいことをしている、本気でそう信じていたと加藤さんは振り返る。

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