マニュアルに「風俗嬢は人ではない」 「買春者天国」であり続けた日本の歴史は変わるのか 北原みのり

作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回のテーマは「買春者」と日本社会について。 * * * 風俗店に女性を紹介し利益を得ていたスカウトグループの会長が逮捕された。驚いたのは、彼らが1年間で約44億5000万円を得ていたとみられるという報道だ。性産業の巨大さを、私はまだまだよくわかっていないのだと言葉を失う思いだ。 10年ほど前、スカウトをしている男性に取材したことがある。歌舞伎町あたりではちょっと知られているというその男性は「リュックのチャックが開いたまま歩いている女の子」「ファッションセンスがずれている女の子」に声をかけると言っていた。都会慣れしておらず、警戒心がなく、客観性が薄い若い女性を狙い言葉巧みに風俗店で働かせる。一度女性と関係を築いてしまえば、彼女が性産業にいる限り、彼にお金が入ってくるシステムだ。 ……という話ももう、昔話だ。今はSNSがスカウトの主戦場。そこでは女性のリュックのチャックが閉まっていようがいまいが関係ない。巧みな話術も必要ない。ただ「お金に困っている獲物」をSNS上で探すだけ。時には女性たち自らスカウトに捕まりにいくこともある。「女性が商品になる」ためにはスカウトが必要という前提が、性売買マーケットの中でシステム化してしまっているのだ。 昨年摘発されたスカウトグループは、SNSでスカウトした女性を容姿や年齢や身長などでランク分けし、風俗店を相手にオークションにかけ、一番高い値をつける店に女性を斡旋していた。彼らのマニュアルには「風俗嬢は人ではない」と書かれていた。女性をモノとして高い値で流通させていたそのスカウトグループは、5年間で約70億円もの収益があったという。 昨年、風営法が改正され、女性を風俗店に紹介するスカウトを使うことは違法になった。それでも現実には、スカウトと手を切れない風俗店は多いという。なぜなら、店としては常に新しい「商品」が必要だからだ。「商品」が来るのをただ待っていただけでは利益が生まれない。女性を値踏みし、女性をケア(という名の監視)し続けるスカウトの存在は、風俗店側にとっても必要な存在なのだ。全ては買う男のために。己の利益のために。「女」を所有し続けるために。

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