「あれは無罪やね」 記者の一斉取材に当時の捜査員は 日野町事件

滋賀県日野町で1984年に起きた強盗殺人事件、「日野町事件」の死後再審が決まった。捜査と裁判に問題はなかったのか。朝日新聞は最高裁判断を前に、記者15人で、かつての事件関係者を一斉に取材した。 「あれは無罪やね。証拠がない」。県警の元捜査員は、そう言い切った。 85年に初めて取り調べをしたとき、阪原弘さんからは犯人特有の反応が「全くなかった」という。「事件当日のことを聞いても、『どうしとったやろう』『こうしとったかな』という感じだった」 阪原さんは88年、酒店主の殺害を「自白」したとして逮捕された。だが別の元捜査員によると、犯人しか知り得ない「秘密の暴露」がなかったという。 「当然こうでしょう、というところに行き着かない。変な自白だった」 逮捕を指揮した元幹部は、自白以外の証拠が乏しい、難しい事件だったと振り返る。「でも犯人の可能性があるわけやから、放っておくというわけにもいかない。裁判官に判断してもらうのが妥当だった」 大津地裁では95年の判決直前、検察官が起訴内容の殺害場所を「店内」から「日野町及びその周辺」に広げる異例の変更を申し出た。被害品の金庫の中の現金も「不詳」とし、犯行時刻にも幅を持たせた。 地裁はそれに沿って無期懲役とした。「いつどこで殺害し、何を奪ったかもわからない。けれども犯人だと言っているようなもの」。阪原さんの遺族は、そう判決を批判している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加