2月27日、小学館が運営する漫画アプリ「マンガワン」が、’22年から連載している『常人仮面』の配信を停止し、単行本の出荷を停止することを公式サイトならびにアプリ上で発表。原作者の起用判断、確認体制に問題があったことが理由だとしている。 編集部の声明によると、同作の原作者である一路一氏は、’22年に連載が中止された漫画『堕天作戦』の作者・山本章一氏と同一人物。当初、連載中止の理由は「私的なトラブル」と発表されていたが、今回の声明で、一路氏(山本氏)が’20年に逮捕・略式起訴され罰金刑を受けていたことが明らかになった。 トラブルを起こしていた山本氏の名義を変更して『常人仮面』の連載をスタートしたことについて、編集部は《本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした。何よりも被害に遭われた方に対し、心よりお詫び申し上げます。編集部として責任を重く受け止めております》とコメント。読者や『常人仮面』の作画担当者・鶴吉繪理、「マンガワン」に起稿している作者に向けて謝罪した。 「’20年に通信高校の男性教師が、女性生徒に対する児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)で罰金30万の略式命令を受けた事件がありました。そして今年2月20日、女性が教師から繰り返し性的被害を受け、PTSD(心的外傷ストレス)を負ったとし、損害賠償を求めて’22年に教師と学校側を訴えていた民事裁判の判決が下ったのですが、実はその教師が、『堕天作戦』の作者・一路一氏とされています。なお、裁判では女性の訴えが一部認められています。 さらに、共同通信は小学館の編集者が当該性加害事件の示談交渉に加わり、被害女性に口止めを求める和解条件を提案していたと報じています」(WEBメディア編集者) 「マンガワン」の編集者が和解協議に加わったことについて、編集部は《山本氏と被害に遭われた方との民事訴訟において言及された、和解協議については、編集部が組織として関与する意図はありませんでしたが、当事者双方からの求めに応じる形で編集者がメッセージアプリのグループに参加したことがありました》と説明。 続けて、《参加以前に既に当事者間で協議されていた条件があり、編集者は、当事者に対し、弁護士を委任して公正証書を作成してもらうよう助言をしております》とも釈明し、《当該事案の重大性に対する編集部としての認識および情報把握が十分であったとは言えず、不適切な対応でした。あらためてお詫びするとともに、再発防止に取り組んで参ります》と締めくくった。 なお、今回の騒動をめぐっては、25日ごろからXで裁判資料が拡散され、小学館に対して説明を求める声が続出し、「マンガワン」の編集者に密着したドキュメンタリー動画を発信しているYouTubeチャンネルからは、2月27日夕時点で当該編集者を含め、各編集者が出演していた動画が削除された。その直後に今回の声明が出されたのだが……。 一路氏(山本氏)の名義を変更して新連載を開始したことに関する詳細な説明がなく、編集部ではなく小学館として声明を発表していないことに対して、以下のような疑問の声が上がっている。 《小学館の声明見たけど、なぜ起用し続けたのかとか疑問が残る声明文で酷かったな…件の漫画家も小学館も倫理観が無いんですねって思う》 《ほんと胸糞悪い マンガワンこの対応で終わらす気なら潰れていいよ 好きな漫画も多いけど今後どういう目でそれらの漫画を見ればいいのか これマンガワン編集部じゃなくて上の小学館側が声明出す話だろ》 《山本章一の一件、マンガワンからの内容スッカスカ声明文出てるけど小学館の声明文出てないのどういうことなんだろう》 今回の騒動は、小学館と仕事をしている現役の漫画家からも厳しい反応が寄せられている。小学館から『悪魔の論破~信じてはいけないあの娘のために~』を出版している漫画家の洋介犬氏は27日、Xで《小学館と出版契約状態にある『悪魔の論破』の契約解除の検討を開始します》と表明。いっぽうで、《他の小学館と契約状態やお仕事中な無関係な作家さんをご非難なきようにお願いいたします》とも呼びかけた。 そのほか、漫画家の伊勢ともか氏も27日に更新したXで、《堕天作戦と同じ時期、同じ賞出身でマンガワンに連載していた立場からすると、今回の事件はショックであり、作家による未成年への性加害、虐待行為を隠蔽したともとれる編集者の行動には強い失望を覚えます》とコメント。当該編集者の行動は担当作家への《大きな裏切り》だとし、こう述べた。 《筆も持てないほどに動揺し事件に対し心を痛めている彼らを見ると、怒りと悲しみが収まりません》 続けて、《僕自身も、昨日まではマンガワンで連載していた事を誇りに思っておりました。ですが今はそれを恥ずかしく思う気持ちです》と綴り、《編集部には今後の責任を持った対応と、この様な事態が二度と起こらないようにするための体制の改善を強く望みます。また、未だに想像を絶する苦しみの中にいるであろう被害者の方には、一刻も早く本件の然るべき決着と適切なケアによる平穏が訪れる事を心から願っております》と締めくくっていた。