【担当記者の目】伊勢ケ浜親方の暴力事案 部屋閉鎖、師匠交代に踏み込まず…過去の処分との大きな差とは

日本相撲協会は2018年に暴力決別宣言を出し、特に親方の暴力事案には厳しい処分を科してきた。20年の中川親方(元幕内・旭里)は弟子3人への暴力や暴言、24年の前宮城野親方(元横綱・白鵬)は弟子の度重なる問題行為への監督責任を問われ、ともに2階級降格。中川部屋は閉鎖、宮城野部屋は一門の伊勢ケ浜部屋の預かりとなった。 今回は2階級降格は同等だが、部屋の閉鎖や師匠交代には踏み込まなかった。藤島広報部長(元大関・武双山)は処分内容の違いについて問われ、過去2例は報告義務違反に加え、中川親方は「長期的に暴力と暴言が複数回続いた」。前宮城野親方は聞き取り調査に部外者を参加させ、「妨害の恐れがあった」と調査協力義務違反とみなされたことが影響したと指摘した。 協会の暴力禁止規程には「自主申告したときは、懲戒処分を減軽または免除することができる」と明記されている。伊勢ケ浜親方は暴力を振るった後で速やかに報告していた。藤島親方は「どういう理由があっても暴力は絶対ダメだが、本人がすぐに報告し、一過性のものである」。事実関係を調査したコンプライアンス委員会の答申にも記された「自発的に報告」「単発的」が処分内容を決めるポイントとなった。(大相撲担当キャップ・林 直史) ◆伊勢ケ浜親方の暴力問題の主な経過 ▽2月21日午前3時~ 暴力事案が発生 ▽同23日 伊勢ケ浜親方が勝ノ浦コンプライアンス部長に暴力を振るったことを報告 ▽同24日 同部長が当事者を呼んで事情を聞き取り。事実を確認した上で、八角理事長に報告 ▽同27日 伊勢ケ浜親方が日本相撲協会から事情聴取を受けていたことを認め、弟子たちに「責任ない行動を取ってしまった」と謝罪したと説明 ▽3月6日 同親方が春場所を休場することが決定。調査の段階のための暫定処置で、部屋での指導は制限されず。 ◆大相撲の主な暴行事案 ▽06年7月 幕内・露鵬が男性カメラマンに暴行して3日間の出場停止 ▽07年6月 当時17歳の序ノ口力士が師匠・時津風親方(元小結・双津竜)や兄弟子3人から暴行を受けて死亡。4人は傷害致死容疑で逮捕され、協会を解雇 ▽10年1月 横綱・朝青龍が優勝した初場所中に泥酔して知人男性を暴行した問題で、現役引退 ▽17年10月 鳥取市内で幕内・貴ノ岩が横綱・日馬富士に頭部などを殴られ負傷し、2場所連続休場。日馬富士は現役引退 ▽18年3月 十両・貴公俊が春場所中の支度部屋で付け人に暴行。場所を休場して1場所の出場停止処分 ▽20年7月 師匠・中川親方(元幕内・旭里)が3人の弟子を殴打するなど暴力を振るった。指導の際に「殺すぞ」「クビにするぞ」などの暴言も日常的に繰り返されており、部屋の閉鎖と親方の委員から平年寄への2階級降格の処分 ▽22年12月 伊勢ケ浜部屋で幕下以下の力士2人がちゃんこをかけるなどの暴力があったと被害者親族の電話相談により判明。加害者の1人は引退し、報告を怠った師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は協会の役職を2階級降格 ▽23年5月 幕下以下の力士1人が22年末から昨年1月にかけ、兄弟子に顔面などへ暴力を繰り返し受けたことが発覚。力士は引退し、師匠の陸奥親方(元大関・霧島)は事業部長を辞任 ▽24年2月 宮城野部屋の幕内・北青鵬が、同部屋の2力士に対し、顔面、背中及び睾丸(こうがん)への平手打ち。財布に瞬間接着剤を塗布し、損壊。殺虫剤スプレーに点火してバーナー状にした炎を体へ近付けるなどの行為を日常的に繰り返されてきたことが発覚。北青鵬は引退。監督責任などで、師匠(元横綱・白鵬)を委員から年寄への2階級降格と、3か月の20%報酬減額処分。部屋は一門の伊勢ケ浜部屋への預かりとなった

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