【2008年のINTERNET Watch】秋葉原通り魔事件発生、犯行予告など「有害情報」が社会問題に。「Google Chrome」と「ストリートビュー」登場

■ 2008年の出来事 2008年(平成20年)6月、秋葉原で「秋葉原通り魔事件」が発生し、17人が死傷。PC・IT業界にとって関係の深い街で起きた事件は、SNSなどでも特に重く受け止められ、影響も大きかった。 政局では、9月に福田首相が辞任して麻生内閣が発足した。その麻生内閣も翌2009年には民主党に政権交代して鳩山内閣が発足と、国内ではしばらく短命政権が続くようになる。 米国で、9月にリーマン・ブラザーズが経営破綻して「リーマン・ショック」が発生。世界的な金融危機となった。そして、この年に行われた大統領選により、バラク・オバマ氏が当選。2009年に大統領に就任する。初の白人以外の大統領であり、ネットにおいては選挙期間中のイメージ戦略にSNSを活用した事例としても注目を集めた。 2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2008年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。 □1. Googleマップ「ストリートビュー」が日本で開始も、問題続発 ▶Googleマップの「ストリートビュー」機能、日本でも開始 Googleマップのストリートビューは、2007年5月に米国でサービスを開始。日本では、この年の8月に5都市を対象にサービスを開始した。 ところが、撮影したカメラの位置が高く、日本の多くの住宅では塀などを超えて庭の中の様子が見えてしまう点や、人の顔や自動車のナンバープレートなどが写って点など、多くのプライバシーの問題が指摘された。 Googleは当初、こうした指摘に対して「公道から撮影したものであれば、基本的には公開して構わないと考えている」「処理が完全ではない場合もあるため、問題のある画像については報告してほしい」といった説明を行っていたが、2009年5月に、カメラの位置を低くしての再撮影などを発表。見直しが行われて現在に至る。 □2. “ブラウザー戦争”再び? 「Google Chrome」の提供が始まる ▶Googleが独自ブラウザ「Google Chrome」を9月2日にリリース 世界100カ国以上でベータ版同時公開 9月に「Google Chrome」ベータ版が公開された。この際のコメントについて、上記記事では「ブラウザを、アプリケーションを実行するためのプラットフォームに仕上げようとする意図を感じさせる。それだけに、巨大なプラットフォームであるWindowsを持つMicrosoftとのこれまでにない本格的な対決を予感させる」として、Microsoft Office代替環境としてのGoogleドライブ(Googleドキュメント)に言及している。 また、発表された9月1日が米国では休日であり、ほかのニュースが少なくなる中で、同社が主要なブログに対して事前に情報を提供していたことなどに言及している。同年12月にChromeは正式版となった。 2008年当時、スマートフォンはまだ普及しておらず、携帯電話のインターネット機能は限定的であり、インターネットを利用するアプリケーションとして、PC向けウェブブラウザーの役割は非常に大きく、シェア争いの重要度も高かった。この年、Microsoftは3月にIE 8ベータ版を、Appleは同じく3月にSafari 3.1を公開している。MozillaはFirefox 3の公開時、24時間で合計800万2530ダウンロードのギネス記録達成で話題作りをしている。 □3. NTT東西、NGNを用いた「フレッツ 光ネクスト」の提供を開始 ▶NTT東西、NGNサービスを個人に提供開始、3月31日から NTT東西が、NTTグループの次世代IP通信網である「NGN」(New Generation Network)を利用した商用の光回線サービスとして、2026年現在も続く「フレッツ 光ネクスト」の提供を3月に開始した。 それまでの光回線サービスである「Bフレッツ」については、この後、契約者を「フレッツ 光ネクスト」に移行するなどの施策が行われ、2021年にサービスを終了した □4. 秋葉原通り魔事件の影響もあり「有害情報」が社会問題化 ▶秋葉原事件以後のネット上犯行予告、検挙事例一覧 6月8日に発生した秋葉原通り魔事件で、犯人は犯行前にインターネット掲示板に犯行予告を行っていた。上記記事は、この年の6月8日~28日の期間に、インターネット上で犯行予告を行ったことによる逮捕・補導が30件あったと警察庁が発表したというもの。 この年、2月頃から特定化学物質を利用しての自殺事件が相次いでおり、その製造方法を紹介するなどする書き込みについて、4月に警察庁が削除要請を行っていた。 このような、自殺の誘因となりうる情報や犯行予告を含むネットの「有害情報」は社会問題となっており、前年より開催されていた総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」においても議題に。違法・有害情報対策を(法律で規制するのでなく)「国民運動」にする、との検討も行われた。 □5. 「青少年ネット規制法」成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど ▶“青少年ネット規制法”が成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、通称「青少年ネット規制法」が6月に成立した。インターネットに有害情報が多く流通する中、青少年が安心してインターネットを利用できるようにするため、インターネット接続サービスを提供する携帯事業者に、ユーザーが18歳未満の青少年である場合にフィルタリングサービスの適用を義務付け(保護者からの申し出がある場合を除く)ている。また、保護者に対しても、使用者が青少年であることを事業者に申し出ることを義務付けた。 INTERNET Watchでは当時「10代のネット利用を追う」という連載を実施。この中で、当時自民党青少年特別委員会の委員長であり、法案作成の中心的な役割を果たした人物として、高市早苗衆議院議員にインタビューを行っている。 □6. 「iPhone 3G」、ソフトバンクが発売 ▶Appleが「iPhone 3G」を発表、日本を含む22カ国で7月11日に発売 Appleが6月に「iPhone 3G」を発表した。前年に発表された初代iPhoneは日本国内で発売されず、iPhone 3Gはソフトバンクだけが販売した。より広い普及は、翌2009年に「iPhone 3GS」がNTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアで販売されるのを待つことになる。 □7. 無線LANの暗号化技術「WEP」が数秒で解読可能に、総務省も注意呼び掛け ▶「WEPは10秒で解読可能」、神戸大と広島大のグループが発表 無線LANの最初期の暗号化方式である「WEP」については、この年以前にも複数の脆弱性が判明しており、より強度の高い「WPA2」などの方式の利用が呼びかけられてきた。そして、この年の10月にわずか10秒で解読可能との実験結果が報告されたのが、上記のニュース。 これを受け、総務省も注意喚起するなどした。 □8.米大統領選、オバマ陣営のSNS活用が話題に ▶宣伝効果はCM46億円相当、オバマ大統領のYouTube政治戦略とは 2008年の米大統領選挙において、民主党のバラク・オバマ氏が、共和党のジョン・マケイン氏に勝利した。この選挙において、オバマ陣営はTwitterやYouTubeを活用したイメージ戦略を展開して話題となった。上記記事は2009年1月の記事だが、YouTubeのシニアプロダクトマネジャーが、オバマ陣営のYouTube活用事例を紹介し「米国のテレビ広告費に換算すると46億円相当」だと評価している。 投稿量の多さに加え、キャッチフレーズ「Yes, We Can」のコラボレーションやマッシュアップの動き、テレビとの相乗効果、多言語字幕への対応などが言及されている。また、反オバマ陣営がインタビューの失言部分のみを編集した、今でいう「切り抜き」映像をアップロードしたが、支持者がインタビューの全編をアップロードし、失言の真意が伝わるようにするなどしてオバマ氏を擁護する動きを見せた、といった事例もあったという。 オバマ氏の大統領就任に関連し、2008年末にはオバマ氏が経済再生計画の柱として打ち出していたブロードバンド基盤整備に関する記事を公開している。また、再選を狙った2012年の大統領選挙では、Twitterで勝利宣言が記録的なリツイート数となったことを紹介している。 □9. JASRAC、YouTubeやニコニコ動画と包括契約 ▶ニコニコ動画でJASRAC楽曲の利用が可能に、ニワンゴがJASRACと契約締結 ▶YouTubeとJASRACが利用許諾契約、演奏動画の投稿が可能に JASRACは、この年の4月にニコニコ動画と、10月にYouTubeと包括的な利用許諾契約を締結。大手動画共有サイトで、JASRACの管理楽曲を演奏・歌唱した動画をユーザーが投稿できるようになった。 この年には、ほかの音楽著作権管理団体と動画共有サイトの間でも包括利用許諾契約が結ばれた。Googleとジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)との契約のニュースでは、「アーティストのオリジナル楽曲と、ユーザーのカバー楽曲が同じサービス上に並ぶことになり、ユーザーにとってはより深い音楽体験ができる。JRCは今後も時代に敏感な著作権管理事業者でありたい」というJRC側のコメントが紹介されている。 □10. Facebookが日本語サービス開始 ▶Facebookが日本語サイト公開、実名ユーザー登録で差別化図る 2004年に米国で一部の大学生向けのSNSとしてスタートしていたFacebookは、徐々に対象を拡大し、2006年に一般向けにサービスを提供。2008年から英語以外の言語圏向けにも展開し、この年の5月に日本語サービスの提供を開始した。ハンドルネームなどでの利用が多かった当時のSNSで、「実名で登録すること」を特徴としている。 マーク・ザッカーバーグ氏とFacebookの評伝を原作とした映画「ソーシャル・ネットワーク」が日本で公開されたのは2011年1月で、これと前後して2010年頃から、「ビジネス向けSNS」として日本でもFacebookが盛り上がるようになる。

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