磐越自動車道で北越高(新潟市中央区)男子ソフトテニス部の生徒1人が死亡したマイクロバス事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで逮捕された容疑者の男(68)=胎内市=は、独居高齢者らの生活状況を民生委員が訪問調査する対象だったにもかかわらず、事前の意向確認で本人が調査を不要としていたことが分かった。容疑者を巡っては健康不安を抱えていたとみられ、訪問調査は異変に気付くきっかけにもなり得たが、支援につながらないままだった。 胎内市では、災害時や市民からの救急車要請時に速やかに救護活動ができるよう、高齢者の心身の状態や持病などを把握する訪問調査を年に1度実施。65歳以上の独居を含む高齢者だけの世帯などが対象で、民生委員が訪ねる。しかし調査は任意で、事前にはがきで意向確認をし、不要の場合は調査に至らない。 近隣住民や知人らによると容疑者は1人暮らしだったとみられる。胎内市によると、2023年度から訪問調査の対象になっているが、25年度まで毎年、調査は不要と回答していたという。 容疑者は、マイクロバス事故前に複数回物損事故を起こし、新潟県警に運転免許証の返納を促されていた。バス事故を起こす前に知人らからも「目がうつろ」「歩き方がおぼつかない」など体調変化を疑う声が上がっていた。 容疑者が住む地域の民生委員の男性は「訪問を希望していない人に対して積極的に介入することはできない」と打ち明ける。支援が必要な状態との認識も低かったという。容疑者は今年3月末まで新潟市内のランニングクラブに勤務もしていた。 前町内会長の男性は「自宅にいないことが多く、地域の行事に誘うことも難しかった」と証言する。「つながりがあれば近所の人から連絡が入り、支援機関に相談することができたが…」と声を落とす。 民生委員や地域の見守りについて、新潟医療福祉大(新潟市北区)の青木茂教授=地域福祉=は「65歳以上だとしても最近まで働いていた人は見守りの優先度が低くなる」と解説。「異変に気付いたとしても、本人に指摘するのは難しい。支援のはざまに落ちてしまったのではないか」と推測する。 身近に頼れる親族がいない人を支援する「身寄りなし問題研究会」(新潟市中央区)代表の須貝秀昭さん(55)は、「地域包括支援センターといった相談先を知らない人は多い」と強調する。見守りなどの公的な福祉サービスは、本人や家族が申し込んで初めて受けられる「申請主義」が前提になっていることも壁になっているとみる。 容疑者のように地域住民との交流が希薄な人について、「職場の同僚や飲み仲間、インターネット上の知人などが支援につながるきっかけになれればいいのだが」と語った。