〈正念場を迎えた再審法改正〉雨宮処凛

「松山事件」「吉田事件」「弘前事件」「加藤事件」「梅田事件」「東住吉事件」──。 あなたはこれらの事件を耳にしたことがあるだろうか? あるとしたら、これらに共通するものはなんだか、わかるだろうか? 答えは、「再審無罪」が確定した事件。 冤罪事件といえば袴田事件が有名だ。ほかにも、女児殺しの犯人として菅家利和さんが逮捕され、17年半を獄中で過ごした足利事件、強盗殺人事件の犯人として桜井昌司さんが逮捕され、29年を獄中で過ごした布川事件も知られている。「免田事件」や看護助手が逮捕された「湖東事件」も有名だ。が、それ以外の「再審無罪」が確定した主な冤罪事件、実に22件もあるのだ。再審無罪を目指している主な事件は、15件。 無実の罪で刑務所にブチ込まれ、何十年も人生を奪われる──。どう考えても自分の人生で起きてほしくないことナンバーワンくらいの不条理だが、今、再審=裁判のやり直しを巡る法改正が正念場を迎えている。 5月20日には「再審法改正をめざす市民の会」によって「ノーモアえん罪 市民の力で、今こそ変えよう再審法」が開催され、私も参加してきた。 再審法の課題については本誌5月29日号に詳しいので割愛するが、この日は「日野町事件」の再審請求人・阪原弘次さんも登壇。阪原さんの父親は、1988年、「犯行を自白した」として強盗殺人の容疑で逮捕されたのだが、のちに自白の強要やアリバイの存在などを訴えて無実を主張。自白以外に阪原さんと事件を結ぶ証拠はなかったものの、2000年、無期懲役が確定。そうして逮捕から23年後の11年、獄中で肺炎を悪化させ、病院で死去。 弘次さんは父親の死後も再審を求め続け、やっと今年、最高裁で再審開始が確定。逮捕から、実に38年。阪原さんは「自分たち家族は公平な裁判を受けたのか」と無念を語りつつ、言った。 「父はなんのために死んだんですか。あの時、すべての証拠が揃っていたら、父は死ぬことはなかった。今でも元気に生きて、子どもや孫、ひ孫や玄孫に囲まれて幸せに暮らしてると思うんです」 この日は袴田巖さんの再審開始と釈放を決定した、元裁判官の村山浩昭氏もスピーチ。 「間違った裁判によって、いわれのない処罰を受けている人を救済する。正義中の正義です」 大きな注目が集まる再審法の行方、しっかりと見守っていきたい。

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