「地面師が大阪で動いているようだ」 昨年6月上旬、社会部の記者は、懇意にしている情報通からそう聞いた。南海難波駅に近い大阪市浪速区の土地が、不正に売りに出されているという。 地面師詐欺――。土地の所有者になりすまして勝手に売却し、金を得る年季の入った手口だ。昭和時代から何度も繰り返されてきた。「不動産バブルの今だからか」。驚きを隠せない記者に、情報通は付け加えた。「多数の案件が同時に動いているみたいですよ」 大阪市内はコロナ禍の収束以降、4年連続で土地の価格が上昇し、再開発ブームに沸く。昨年の大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート(IR)の開発が追い風になっている。 記者の頭に浮かんだのは、小説を原作にネットフリックスで人気を集めたドラマ「地面師たち」だった。「物語さながらの大きな組織が裏で動いているのだろうか」 当事者から話を聞こうと、記者たちは、関係者に当たり始めた。不正の闇は、大阪・キタの一等地にも及んでいた。