「日本で香港の民主活動家が国家安全維持法(国安法)違反を理由に入国を拒否されかけた」─。今月中旬、こんな情報が取材先から寄せられた。国安法は2020年6月に施行され、香港の言論や集会の自由を厳しく制限し、高度な自治を保証した「一国二制度」を形骸化させた。施行当時、西側諸国をはじめ日本政府も重大な懸念を寄せ、非難した経緯がある。一方、その国安法違反で服役した民主活動家が、日本で長時間の入国審査を強いられるとは。当事者の民主活動家から経緯を聞いた。 ■「47人」の1人 民主活動家は岑子傑(ジミー・シャム)さん(39)。今月16日、羽田空港での入国審査は約20時間にわたった。ジミーさんは、香港民主派47人が起訴された「民主派予備選」事件の被告の一人。民主派は20年7月、立法会選挙で過半数獲得を目指して予備選を実施。香港当局はこれを「国家政権転覆の共謀に当たる」として47人を国安法違反で起訴した。 ジミーさんは翌21年1月に逮捕され、昨年5月30日に出所した。 今回の来日は誕生日祝いを兼ねた家族旅行が目的で、今月20日まで鎌倉などを観光する予定だった。16日午後3時前に羽田空港に到着した。 入管職員は「1年以上の刑事罰」があることを確認して、詳しい事情を聴取したという。ジミーさんは国安法について、持参した民主派予備選事件に関する記事や判決資料を示しながら「殺人や放火、窃盗といった一般刑事事件ではなく、極めて政治的な案件」と説明したという。 ■「懸念」より上位の「遺憾」で非難 国安法が導入された当時、菅義偉官房長官や茂木敏充外相らは「遺憾」という表現を用いて中国側を強く批判した。「遺憾」は「懸念」や「憂慮」よりも強い外交表現で、1989年の天安門事件の際にも用いられた。 それから6年。ジミーさんによると、国安法事件の特殊性については「入管職員も十分には理解できない状況だった」という。職員からは「特別な審査が必要で、3、4日かかる可能性もある」と説明され、同行していた家族は先に入国し、ジミーさんだけが空港内に残されたという。 ■欧米や韓国では入国できたが…