国際刑事裁判所(ICC、赤根智子所長、本部オランダ・ハーグ)が米国やロシア、イスラエルの強い圧力にさらされ、設立以来最大の危機にひんしている。 ICCは、人道に対する罪や戦争犯罪、ジェノサイド(集団殺害)などを犯した個人を国際法に基づいて捜査し訴追するための、常設の国際刑事法廷である。 ICCが米国や当事国から激しい攻撃、脅迫、圧力を受けるようになったのは、ロシアのプーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したためだ。 プーチン大統領は、侵攻したウクライナから子どもをロシアに連れ去った戦争犯罪に関与した疑い。ネタニヤフ首相は、ガザでの戦闘を巡り戦争犯罪と人道に対する罪の疑いが持たれている。 ロシア、イスラエルはこの措置に猛反発。ロシアは欠席裁判で赤根所長らに有罪判決を言い渡した。 そして両国以上にICCの存在そのものを脅かしているのは、米国のトランプ政権である。 トランプ大統領は、ICC職員らに制裁を科す大統領令に昨年2月、署名した。職員や家族の資産凍結、米国への入国査証(ビザ)の発給制限などが含まれる。 ルビオ国務長官は「全ての手段を用いてICCを解体する」とまで言い切った。 加盟国に脱退を促し、ICC本体に制裁を科すことになれば、事実上の活動停止に追い込まれる可能性もある。 憂慮すべき事態だ。 ■ ■ ICCには現在、125の国と地域が加盟しているが、米国、中国、ロシア、イスラエルはいずれも非加盟。 ルビオ長官は「ICCが法令や条約、国際法と呼ばれるもので米国に戦争を仕掛けている」と主張する。 この見立ては、誰が「力による支配」を掲げ、誰が「法の支配」を主張しているか、対立点を明瞭に示すものだ。 赤根所長は、トランプ氏が大統領令に署名した際、非難声明を発表した。「裁判所の独立性と公平性を損ない、罪のない犠牲者から正義と希望を奪うことを求めるものだ。断固拒否する」と。 そもそも国連は主権平等の原則で成り立っている。米国がICCの解体を公然と主張すること自体、自制心を欠いた大国の思い上がりと言うほかない。 ■ ■ 与野党の国会議員による「人権外交を超党派で考える議員連盟」(中谷元会長)は、米国務省の対応を「圧力」だと指摘し、抗議する声明を出した。 日本政府はこれまでICCに対する支援や協力の姿勢を示してきたが、トランプ政権がICC攻撃をエスカレートさせたとき、どう対応するか。 米国が加盟国に脱退を働きかけた場合、米国との関係維持のため、それに従う国々が出てくる可能性も否定できない。 世界を「力による支配」に逆戻りさせてはならない。