東大大学院で物理学を学んだ経歴を持ち、突き抜けた個性を見せるYouTuber・たむらかえ。サブカルチャー、煙草、散歩――日常を独自の言葉で切り取り、多くの視聴者を惹きつけるYouTuber・morgen。 それぞれが人気を集める個人クリエイターでありながら、イベント『KCFR』やラジオチャンネル「どんじゃす」など、最近は二人で行う活動も増えている。 一見すると交わることのなさそうな二人だが、ひとたび話し始めると、不思議と波長がぴたりと重なる。対照的だからこそ生まれる掛け合いは、見ている人を自然と引き込んでいく。 正反対にも見える二人は、なぜ惹かれ合い、一緒に活動を続けているのか。今回は、その関係性と、クリエイターとしての価値観に迫った。(はるまきもえ) ◾️出会いは1日がかりの「鎌倉ロケ」 ーーまずはお二人がYouTubeを始めたきっかけについて、教えてください。 morgen:私は20歳のときにすごく落ち込む出来事があって、人生が大きく揺らいだんです。当時はバイトを4つ掛け持ちしていたんですけど、あまり外にも出られなくなっちゃって。ひとり暮らしをしていたんですけど、天井を見ながら「来月の家賃払えないな……」ということに気づいて、その翌日にYouTubeを始めました。 ーーすごい行動力ですね。 morgen:当時は、とにかく即金がほしかったんですよね(笑)。YouTubeの収益化のシステムとか何も知らなかったんですけど、「YouTubeドリームってあるよなぁ……」とぼんやり思って。「お金をもらえるチャンスにエントリーできる」ぐらいの感覚で投稿したのが始まりでした。 ーーその後、2本目の動画がヒットしたのは、すごいスピード感です。一方で、たむらさんも2本目の動画がヒットしたんですよね。 たむらかえ:そうなんです。2本目界隈なんです。 ーーたむらさんの活動のきっかけは、TikTokだったと伺いました。 たむらかえ:TikTokに投稿したピアノの発表会の動画がすごく再生されて、その流れでYouTubeも「試しに」という感じで始めました。最初はお菓子作りの動画を投稿していたんですけど、撮影と編集が大変すぎて、もう少しハードルを下げて投稿できるチャンネルを作ろうと思って、「たむらかえ2」というチャンネルを開設したんです。東大生のなかでも物理学科って、Tierが高いっていうのと、その界隈ってXをやっている人が異常に多いんです。だから「そういう人がYouTubeを始めたぞ」っていうので、最初は肩書だけで伸びていきました。 ーーそうなんですね(笑)。morgenさんは、その後もなぜYouTubeを続けてこられたのでしょうか。 morgen:チャンネルを開設して2カ月後に、雷獣さんとコラボをしたんです。それからはたむらさんともコラボをして、だんだん活動も本格的になってきました。楽しいというよりは、「続けるしかないな」と、徐々に腹を括ったって感じです。 ーーたむらさんも活動当初、雷獣さんにいろいろと教えてもらったと言っていましたね。 たむらかえ:そうですね。サムネイルの相談に乗ってもらったり、個人でやっているラジオも「絶対やったほうがいい」と背中を押してもらって始めました。もちろん、同じクリエイターとして悔しさを感じることもあります。でも、だから頑張ろうと思えるので、すごくありがたい存在ですね。雷獣が少し先を走ってくれているおかげで、「自分の活動にはまだ天井がない」と思えるし、数字を伸ばしている存在が近くにいることは、いい刺激になっています。 ーーmorgenさんも、雷獣さんに対して悔しさは感じるのでしょうか。 morgen:悔しさはあります。グループでYouTubeをやっているという面でも、楽しそうだな〜とか、羨ましいな〜とか思って枕を濡らす日も少なくありません。 ーーそんなにですか!?(笑) でも、追いかける存在がいることは大事ですね。 たむらかえ:向こうが相談してくれることもあるんですよ。こっちが背中を追いかけていると思ったら、ボールを投げてくれる。ラグビーで同じ方向に走りながらボールをを回しているみたいな状態です。 ーーお二人は、コラボ撮影のときが初対面だったと伺いました。たむらさんからのオファーだったそうですが、なぜmorgenさんに声をかけたのですか? 東大理物女子です。morgenさんと友達になれた気がするので確認してください。 たむらかえ:鎌倉で1日を過ごして、お互いにVlogを作るという企画だったんですけど、この企画は本当にmorgenに適しているなと思ったので、声をかけました。 morgen:連絡が来たときはめちゃくちゃびっくりしました! なんなら私は、たむらさんの冷笑対象だろうと思っていたので……。 たむらかえ:えー?(笑) morgen:たむらさんが持っている面白さの基準や価値観に、私の動画が当てはまっているとは全然思わないんです。 たむらかえ:いや、私はmorgenの動画を見て、「ちゃんと映像で見せられる人だ」と思っていました。だからこそ、同じ場所で同じ時間を過ごしても、お互いの視点を通したらまったく違う動画になるんじゃないかと思って、声をかけました。 ◾️「同じ軸上の反対にいる」ふたりの不思議な関係性 ーー私は普段からお二人の動画を拝見しているんですけど、タイプや性格がまったく違うのに、不思議と共鳴している部分があるように感じます。お互いの関係性については、どう感じますか? たむらかえ:真逆だな、と思います。真逆なんですけど、同じ軸上にいるんですよね。持っている軸が共通していて、そのなかで反対にいるような気がします。 ーーなるほど。 morgen:私も、たむらさんとは何かを判断するための価値基準が一緒な気がします。考えているテーマは一緒なんですけど、出す結論が違うというか。 ーーお互いの考えていることはわかるけど、という。 morgen:そうそう、理解はできるけど、全然違う。 たむらかえ:最終的に出す結論が違うな、とは常々感じますね(笑)。 morgen:逆に“ダサい”と思っていることは一緒かも。お互いにダサいと思っていることをしないから、尊敬していられる。 ーー一緒にいる時間が増えたことによって、互いに影響し合ってきたなと思う部分はありますか? morgen:動画の作り方でいうと、私はワンシーンの尺が短くなって、全体のテンポが早くなったと思います。「飽きずに見てもらえる動画を作ろう」と思ってはいるんですけど、私は動画で景色を映したりもするし、話すスピードもゆっくりなんです。 一方で、たむらさんの動画はカット数が本当に多くて、ずっと発声しているような感覚で進んでいくんです。だから飽きずに見続けられるんですよね。自分の動画もそのスピード感に影響されて、以前より少しテンポが早くなったなと思います。 たむらかえ:私はずっと、喋り続けないと間が持たないと思っていたんです。でもmorgenの動画を見て、「画がいいだけの時間があっていいんだ」と気づきました。そこから、画角を少し気にしたりするようになりましたね。 あと、私は自分が“いい”と思うものがすごく少ないんですけど、morgenと出会ったり、活動を続けていくうちに、今まで見たことなかったり、食わず嫌いしていたものでも、いいと思える物がたくさんあることに気がつきました。昔はYouTubeも芸人さんの動画しか見ていなかったんですけど、少しずつお笑いがすべてではないなと、思うようになった気がします。 morgen:私たちは特定のコンテンツについて、時間をかけて話すことが多くて。それもあるかもしれないですね。 ーー影響し合うことによって世界が広がるのは、いい関係性ですね。ちなみに、YouTubeといえば数字が付きまとう世界でもありますが、そういった部分は昔に比べて捉え方は変わりましたか? たむらかえ:昔はいるだけで注目されたので、数字はあまり気にしていませんでした。それよりも、毎日投稿を続けることが大事だと思っていたんです。でもいまは、数字をかなり意識するようになりましたね。 ーーそれはなぜですか? たむらかえ:ひとつの企画に入れたい要素がどんどん増えて、動画がすごく重くなってしまったんです。尺も長いし、編集も大変で。だから、1本投稿するのがすごく大変になってしまったんです。それだけに、動画が伸びなかったら本当に悲しい(笑)。昔よりも「ハズしたくない」という気持ちが強くなった気がします。 morgen:たしかに、最近たむらさんの動画を見ていると、“プライドの煌めき”を感じる。 たむらかえ:動画クリエイターとしてのプライドが、どんどん育っています(笑)。自分が面白いと思ったものが伸びなかったらめちゃくちゃ悔しいです。最初のバズとかって運の要素が大きかったりもするんですけど、長く活動を続けると本当に面白いかどうかが数字で返ってくるので、実力がはっきりしてくるなと思います。 ーーmorgenさんは、普段どうやって動画作りをしているんですか? morgen:最初に流れを全部決めてから、撮影をします。自分のなかで撮れ高の基準があって、1本の動画のなかに何箇所かそのポイントを用意するんです。実際はかなり考えて作っているんですけど、それが伝わりすぎるのは違うなと思っていて。あくまで自然に撮っているように見えることを大切にしているので、なるべく作り込んでいる感じは出さないようにしています。 ーーお二人とも活動初期に比べ、考え方も動画作りも大きく変わっているんですね。 ◾️夢は武道館 ーー最近のお二人の活動についても聞きたいのですが、イベント『KCFR』では、約90分のトークショーを行ったそうですね。 たむらかえ:前半はパロディ動画を作って、みんなで一緒に見ました。私たちが私人逮捕系YouTuberで不倫現場に突撃するという設定で。 morgen:後日たむらさんのチャンネルに動画を投稿したら、めちゃくちゃ不評でした。 たむらかえ:会場ではすごいウケたんですよ!? 自分たちも腹抱えて笑うくらい面白かったのに……! ーーなかなか過激な内容ですね(笑)。それ以外だと、お二人はラジオチャンネル「どんじゃす(Don't listen, Just live your life)」を最近立ち上げました。きっかけはなんだったのでしょうか? morgen:私からたむらさんに声をかけました。なんの脈絡もなく、「2人でポッドキャストを始めませんか」と突然LINEを送って。たむらさんとはプライベートでもすごく仲がいいんですけど、公式でも2人でいられる場があったらいいなと思ったんです。 たむらかえ:普段のお互いの会話が面白いので、これ誰も聞いてないのもったいないなと思ってました。 ーーファンにとってはかなり嬉しいコンテンツだと思います。今後2人でやってみたいことや目標はありますか? morgen:「どんじゃす」で言うと、いつか指原莉乃さんや、婚活アドバイザーの植草美幸さんと共演してみたいです。 たむらかえ:あとは、いつか武道館に2人で立ってみたい。大きなリアルイベントを開催できるのって、かっこいいと思うんです。たとえば、アリアナ・グランデとか、MVの再生数が伸びているのより、大勢のなかで歌っている姿の方がカッコいいと、私は思うんです。ネット上の数字だけ大きいというよりは、リアルでも人が集められるようになりたいなと思っています。