「思想の避難所」香港の独立系書店、国家安全維持法強化で相次ぎ閉店

中国本土の指導者や政治的に敏感な思想を扱う、いわゆる「禁書」を販売し、本土の読者にとって思想の避難所の役割を果たしてきた香港の独立系書店が、国家安全維持法強化の余波で相次いで店を閉めている。 31日、AP・ロイター通信と現地メディアによると、元記者らが2022年に設立した独立系書店「ハブ・ア・ナイス・ステイ」(中国名・留下書舎)が前日の最後の営業をもって正式に閉店した。 営業最終日には、香港メディアの黄金期を懐かしむ市民や中国本土からの留学生など多くの読者が詰めかけ、長い列を作って閉店を惜しんだ。 同書店は先月、閉店を告知した翌日に香港警察国家安全処の急襲を受けた。当時、店主と従業員ら3人が「扇動的行為」の疑いで逮捕され、主要な書籍が押収された。 書店側は、悪化した社会環境や財政難のほか、当局の「予測不可能なレッドライン(取り締まり基準)」を営業中止の主な原因に挙げた。 香港の治安当局は、国家安全保障を害する出版物を厳しく取り締まると強調する一方、具体的にどのような本が違法なのか明確な基準を示しておらず、現場の混乱を拡大させている。 独立系書店の受難は今年に入ってさらに加速する様相を見せている。3月の「ブックパンチ」、6月の「ハンター書店」、7月の「グリーンフィールド書店」などが相次いで当局の取り締まり対象となり、閉店したり閉店手続きを進めたりしている。 かつて香港は自由な中国語出版と表現の自由を象徴していた。しかし2015年の銅鑼湾書店関係者拘束事件と2020年の国家安全維持法制定以降、急速に萎縮した。 公共図書館での天安門事件関連書籍の撤去に続き、民間の独立系書店まで廃業に追い込まれ、自由な思想の窓口だった香港の出版生態系が事実上、解体の危機に直面しているとの指摘が出ている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加