生きる意味とは?ドキュメンタリー「京都ALS患者嘱託殺人事件」に大島新ら8名がコメント

ドキュメンタリー映画「京都ALS患者嘱託殺人事件」への鑑賞コメントが到着。ドキュメンタリー監督の大島新、ノンフィクションライターの最相葉月、ライターの武田砂鉄ら8名が感想を寄せた。「京都ALS患者嘱託殺人事件」は、2020年にALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う林優里さんから依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして医師が逮捕された事件を題材にしたドキュメンタリーだ。メディアは苛烈に主犯医師を非難し、世間も同調。2025年には余罪も含め、医師に懲役18年の判決が確定している。監督を務めたのは、和歌山毒物カレー事件を追った2024年公開のドキュメンタリー映画「マミー」の二村真弘。裁判を傍聴したことをきっかけに「何かが抜け落ちている」と感じ、本事件の取材に取り掛かった。被害者である林さんと逮捕された医師、それぞれの人生を追いながら、事件をめぐって見過ごされてきたものを浮かび上がらせていく。劇中では、京都出身の俳優・田畑智子が声の出演を担当。林さんがインターネット上につづり続けた言葉を代読する。プロデューサーは「マミー」に続き石川朋子が務めた。大島は「生きる意味とは? 自分だったらどうする? この再現どうなの? 主治医の立場は?」と頭の中で考えが止まらないとし、「観る者を動揺、あるいは覚醒させる映画だ」と評する。最相は「終末期のケアや死をめぐる対応力『デス・リテラシー』を急ぎ身につけて考えなければならない。議論はそこからだ」と指摘。武田は「直視せずに済ませていた問いを丁寧に磨き、こちらに向かって突いてくる」と本作を表現している。このほか、精神科医の益田裕介、映画評論家の森直人、「和歌山カレー事件 長男」からもコメントが到着。すべてのコメントを以下に掲載する。■ 大島新(ドキュメンタリー監督)コメント生きる意味とは? 自分だったらどうする? この再現どうなの? 主治医の立場は? Twitterどんだけ探ったんだ? 釜山まで? ここでタイトルかよ? お母さん大丈夫か? 医師の倫理とは? 供述分析? 山本氏はなんなの? ユーミン? 復讐……。ダメだ。頭の中のぐるぐるが止まらない。観る者を動揺、あるいは覚醒させる映画だ。■ 最相葉月(ノンフィクションライター)コメント聴きたかった声が聴こえてきた。生と死の境目に立たされた者にしかわからない言葉があった。なぜ林優里さんは尊厳死ではなく、安楽死を選ばざるをえなかったのか。「復讐」の矛先は私たちに向いている。終末期のケアや死をめぐる対応力「デス・リテラシー」を急ぎ身につけて考えなければならない。議論はそこからだ。■ 武田砂鉄(ライター)コメントもし自分だったら、と考えてしまう安直さ。自分の話じゃないし、と考えない安直さ。直視せずに済ませていた問いを丁寧に磨き、こちらに向かって突いてくる。■ 常川拓也(映画批評家)コメント前作「マミー」に続いて、「京都ALS患者嘱託殺人事件」も扇情的に報じられた事件を検証可能な根拠や知見に基づいて再調査する試みである。報道に誘発された犯人像ではなく証拠を見て、すでに形成された判断とは別の可能性を検討する倫理的態度の実践であり、それは、他罰的な感情と「正義」を混同し、早計な結論に至ってしまう社会の危険をも浮き彫りにする。問題や不安の原因を特定の他者に帰属させ、理解の及ばない存在として排除する──ますますたやすく類型的な「怪物」を作り出してしまいかねない時代にあって、二村真弘のドキュメンタリーは、私たちは十分にわかっていると思い込んではいなかったかと問い直すのだ。■ 益田裕介(早稲田メンタルクリニック院長 精神科医)コメント彼女の思索は深く、医療者への怒りはもっともだった。しかし、医師免許はあっても、その深さに付き合える才能は周囲になく、手を差し伸べたのは最も的外れな相手だった。才能のない精神科医のひとりとして無念に思う。■ 三輪記子(弁護士)コメント「法」とは何か?「法を守る」とは何か?「法を破る」とは何か?何のために「法」はあるのか?「法を守りさえすればそれでいいのか?」「生きる」とは何か、「死ぬ」とは何か?難しい問いかもしれないが、誰も逃れられない問いである。絶望の淵で叫んでも誰にも聞こえなかった声を浮かび上がらせる映画。その声の主はあなたであり私である。■ 森直人(映画評論家)コメント二村真弘監督の「マミー」を観た時、メディアによって刷り込まれた「極悪」という林眞須美さんのイメージが、“チャーミングな女性”へと塗り替えられていく面白さを感じた。今回の“ヒロイン”=林優里さんも「ALS患者」という情報だけではない姿が見えてくる。エンディングに“ある曲”が流れた時、涙を禁じ得なかった。好景気期の社会を快活に駆け抜け、苛酷な受難にも自由意思で立ち向かった、彼女の数奇な人生の物語にふさわしいロマンティックなテーマ曲だと思えたからだ。■ 和歌山カレー事件 長男 コメント報道からは見えてこなかった本人たちのやりとりに触れ、命に対する漠然とした正しさや倫理観、死生観が揺らぎ、脳が錯覚するような映像体験でした。希死念慮、当事者にしかわからない苦しみや命の選択。事件を通じて、法治国家における命のあり方を自分自身で考えなければならないと思った。©『京都ALS患者嘱託殺人事件』製作委員会

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加