在日米軍基地が集中する沖縄で、またも米兵が関わったとみられる凶悪犯罪で住民の命が奪われた。強い憤りを禁じ得ない。 国の安全保障の名の下で、県民の人権が踏みにじられ続けている。「基地特権」の抜本見直しに政府は取り組まねばならない。 那覇市で3日に市内の女性が絞殺され、財布などが奪われた事件で、米軍普天間飛行場所属の海兵隊上等兵(20)が強盗殺人容疑で逮捕された。 県警によると、現場から逃走した男の防犯カメラ映像と、身体的特徴や両腕のタトゥーなどが一致している。容疑者は「知りません」と否認しているという。 事件を受け、先月就任した古謝玄太知事は「基地と隣合わせの生活を余儀なくされている県民に大きな不安を与えた」と訴えた。 在沖米軍トップに抗議し、東京にも赴いて高市早苗首相に再発防止と基地負担軽減に取り組むよう求めたのは当然である。 県によると、米軍関係者による刑法犯の摘発件数は増加傾向にあり、昨年の101件は2003年以来の100件超えとなった。 抗議を受けた在沖米軍は、規律訓練や反省のため48時間の活動停止と、午前0〜5時の外出禁止を30日間行うとした。事件のたび再発防止をうたうが、「米軍の綱紀粛正や人権教育が機能していない」(古謝氏)のは明らかだ。 24年から性暴力事件が相次ぎ表面化した際、米側が再発防止策で示した県などとの協議の場「フォーラム」は年1回のみで、個別事件を議題にさえ上げない。県警との合同パトロールも始めたが、抑止効果は上がっていない。 日米両政府が南西諸島で防衛拠点を強化し、共同訓練も拡大する中、沖縄に偏った基地負担に県民の不公平感は募るばかりである。 知事と面会した高市氏は「いかに実効性のある措置を取っていくか、さらに日米間で協議を進めたい」と述べるにとどまった。 政府としてトランプ大統領や閣僚に直接抗議せず、日米安保に波風を立てぬよう気兼ねがにじむ。 だが、「米兵犯罪の温床」と県などが求めている日米地位協定の是正から逃げてはいけない。被疑者が基地内なら起訴前の身柄引き渡しは米側の裁量となるなど、日本側の捜査権が制限されている。 「何度悔しい思いをすればいいのか」-。沖縄の痛みから政府は目をそらさずに、基地の危険性を取り除き、負担を減らす日米協議に毅然と臨む責任がある。