社説:日本人記者逮捕 ロシアは即時解放せよ

ロシアでの取材活動に対する一方的な弾圧であり、容認できない。拘束した記者の安全確保と即時解放を求める。 ロシア連邦保安局(FSB)が、極東サハリン州で北海道新聞ユジノサハリンスク支局の日本人記者をスパイ容疑で拘束した。首都モスクワへ移送して逮捕し、裁判所は2カ月の勾留を認めた。 スパイ罪は懲役10〜20年とされる。2019年に共同通信の日本人記者が拘束された際はすぐ釈放され、国外追放となった。今回は逮捕に至り、拘束の長期化や重罪に問われる恐れがある。深刻な事態だ。 FSBは、記者が日本の情報機関の指示でウクライナ攻撃に日本の北方領土などから動員された人数などを調べ、伝えようとしたためと主張する。 だが、その「指示」関係などの根拠説明は不明確で、納得しがたい。 日本の新聞社・通信社などは、ロシアなど強権国家が統制下に置く官製メディアとは異なり、報道の自由と独立性を重んじて、権力の介入を排している。 北海道新聞は日本のメディアで唯一、記者をサハリンに駐在させ、ロシアが実効支配する北方領土を中心に取材を重ねてきた。 北方領土やウクライナ問題などで現地の情報を収集し、報じるのはメディアの職責であり、日本と世界の重大な関心事だ。 記者は報道ビザを得て活動を続けてきた。拘束は離任して出国する直前のタイミングで、FSBは記者を連行し、支局を捜索する動画を撮って拡散させている。 ロシア国内での自由な取材活動や批判的な報道を萎縮させようという威嚇ではないか。一方的にスパイ容疑を仕立てられた可能性が高い。 ロシアは、ウクライナ侵略で制裁を科す米欧など「非友好国」に反発を強めており、日本に圧力をかける政治的な意図がにじむ。 先月、日本政府がロシア産原油を輸送する「影の船団」への規制や、軍事関係者らの資産凍結などを発表して制裁を強化すると、ロシア側は「相応の対抗措置を講じる」と表明していた。外交的な報復とみえる。 日本政府は、ロシア側に情報提供や人道的配慮などを強く申し入れた。外交ルートによる政府への事前説明はなく、記者ともまだ接触できていない。 一刻も早い解放に向け、交渉に手を尽くさねばならない。

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