警察と連携、特捜部のように独自捜査も 「地検特別刑事部」とは

東京、大阪、名古屋の3大地検に設置されている特別捜査部(特捜部)。「最強の捜査機関」と称される東京地検特捜部に代表されるように、政治家が絡む汚職などの「巨悪」を追うことで知られるが、他の大規模地検に置かれた特別刑事部(特刑部)の認知度は今ひとつだ。地元警察と連携する一方、特捜部のように独自捜査も手掛ける、その実態とは。仙台地検特刑部を例にとり、一端を紹介する。 ■異例の「投入」 「証拠を客観的に調べており、当然の判決だ」 平成16年3月、仙台地検特刑部の加藤昭部長(当時)は、こう胸を張った。 12年ごろ、仙台市の医療施設で点滴中の患者の容体急変が相次いだ。患者の血液や尿などから呼吸停止を引き起こす筋弛緩(しかん)剤の成分が検出された。 宮城県警は13年1月、点滴に筋弛緩剤を混入させて11歳の少女に投与したとして殺人未遂容疑で准看護師の男を逮捕。男はこれを含めて計5件の殺人や殺人未遂の罪に問われたが、証拠が乏しく立証は困難を極めた。 事件を受理した仙台地検は、異例の特刑部投入を決断した。特刑部は県警の捜査を強力に牽引(けんいん)。結局、仙台地裁は無期懲役の判決を下した。「当然の判決」の言葉通り、刑はその後、確定した。 ■「検察官認知」で 特刑部は名古屋地検に第3の特捜部が設置された平成8年、特捜部に準じる捜査部門として、札幌、仙台、さいたま、千葉、横浜、京都、神戸、広島、高松、福岡の9地検に新設された。 冒頭で紹介したように地元の道府県警と緊密に連携しながら重大事件の捜査指揮に当たることもあるが、その「本懐」は、独自で経済事件などを捜査することにある。 仙台地検特刑部も設置から2年後に早速、「成果」を挙げた。ローン未返済の国産高級乗用車を不当に転売する手口を繰り返していた福岡の犯罪組織を一網打尽にしたのだ。 別の事件の捜査中に情報を〝発掘〟したもので、独自捜査の中でも告訴・告発に基づかない、いわゆる「検察官認知」と呼ばれる事件だった。 この組織は、関連の金融会社を使って高級車を「担保に入れる」形で取得し、転売していた。特刑部は、勝手に担保に差し出した行為が「横領罪に当たる」との新しい法令解釈も適用。検察官認知が捜査の端緒となることは決して多くはなく、「特刑部の面目躍如と、評価もされた」(検察元幹部)という。

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