前の妻も再婚した妻もDV被害に遭っていた…日本はなぜDV加害者を罪の自覚なきまま"野放し"にするのか

日本ではどのようなDV対策が行われているのか。ジャーナリストの林美保子さんは「日本にはDV行為に対する刑罰がなく、『被害者を逃す』支援一辺倒で止まっている。その結果、加害者は野放しになっているうえ、加害の自覚がないためにDVの加害を繰り返す結果になっている」という――。(第3回/全3回) ■DV行為に対する刑罰がない日本 日本のDV対策は海外と比べるとかなり立ち遅れている。 「DVは刑法の問題だから、警察に訴えれば済むことだ」とか「加害者は刑務所に入れればいいだけ」と、間違った解釈をしている人も少なからずいる。 しかし、日本のDV防止法は被害者保護を目的とした法律にすぎず、アメリカ、フランス、スウェーデン、スイス、台湾などと違い、日本ではDV行為そのものに対する刑罰がない。 ■被害者は逃げるか耐えるかしかない DVの本質は、パワー(力)とコントロール(支配)と言われる。一つひとつはささいに思えるような行為であっても、繰り返し行われることによって被害者へのダメージが蓄積していく。 被害を訴えれば、警察が加害者を逮捕することはできる。しかし、刑法では個々の暴力事案に対して裁かれるためにDV案件では軽罪になるケースが多く、一定期間勾留されて終わりになりやすい。重罪ではない限りは加害者を刑に処することはできないのだ。日本では、保護命令(被害者への接近や連絡をとる行為などを禁止する命令)に違反した場合のみ刑罰が適用される。 そのため、被害者は逃げるか耐えるしか、手段がない。 「逃げるのを支援するだけでは本当の解決にならない。日本では加害者が野放しになっている」と、DV問題に詳しい専門家や支援者たちは口をそろえて嘆く。 パワハラ上司やいじめっ子に加害の認識がないように、DVの場合でも「加害した」という自覚がない加害者が多い。「自分が家族を正しく指導してやった」とさえ思っている。

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