自身が経営するペットショップの女性従業員6人に対し、5年にわたり性的行為や脅迫行為を繰り返した本多道雄被告(66)。 福岡地裁は25日、検察の求刑どおり、有期刑の上限である懲役30年を言い渡した。 被害者のひとり、自殺未遂をはかった女性Dさんは「ずっと誰かに助けてほしかった。でも誰にも相談できなかった」と泣きじゃくった。 法廷で女性たちが繰り返したのは「逆らったら殺される」、死を現実に感じるほどの恐怖感。 ヤクザと信じ込まされ、「生涯服従します」「逆らったら処罰します」と契約書を書かされた。 誰にも相談できず心身ともに追い込まれていく。 Dさんは記者にこう話した。 「もし私のことを記事するなら、『なぜ私たちが誰にも言えなかったのか』そこを書いてほしい」 長い間、彼女たちが警察に駆け込めなかったのはなぜか。 ■バックヤードから聞こえた大きな音 「被害を受けた女性10人以上いる」 2021年、本多道雄被告(66)が経営するペットショップで社長をしていた男性は、店舗のバックヤードからガチャンという大きな音を聞いた。 かけつけると、女性従業員のDさんが床に倒れていた。 そばには椅子が倒れていた。 高いところの棚の取っ手が外れていてそこにはひもがかかっていた。 自殺をしようとしたんだなと分かった。 この直前、Dさんは本多被告の出張に同行していた。 それまでも日常的にレイプされており、同行すればまたレイプされるのが分かっていた。 社長である男性に「行きたくない」と訴えていたがかなわず、被害を受けた。 ペットショップの社長:性被害で辞めた人は10人以上はいると思う 検察官:当時、警察に行かなかったことをどう思いますか ペットショップの社長:今考えても、当時の状況なら言えない 本多被告による性加害は、ペットショップ内では周知の事実だったが、それが外部に出ることはなかった。 ■”業務”で日常的に本多被告の世話 本多被告が経営していたペットショップには、「糸島勤務」や「雑務」と称して、被告の自宅で身の回りの世話をする業務が存在していた。 従業員が被告の食事を作ったり、風呂、掃除、洗濯、庭仕事をしたりする。 今回起訴されたほとんどの事件がその業務中に発生した。 被害者のひとりDさんが最初に性被害を受けたのは入社してから数年後。 本多被告の寝室で無理矢理レイプされた。 元従業員Dさん:寝室で、嫌ですと言ったが無理やりレイプされました。 逃げようとしたり、手で押しのけたり、足をバタバタさせた。 足をばたつかせたら被告の顎にあたって、被告が激怒しました。 怒りにまかせて『殺すぞ』とか『お前も家族も旦那も殺すぞ』と いわれて怖くなって。 自宅の個人情報を知られているし この日以降被害が繰り返され、最後は毎週のようにレイプされた。 実は、Dさんをはじめ元従業員の女性たちは、本多被告に住民票を提出させられていた。 本多被告は、日頃から暴力団関係者を装い、日本刀などを見せたりしていたという。 検察官:ヤクザのつながりについて聞いたことは? Dさん:父がヤクザの組長で、裏の組織と関係あると聞きました 検察官:人を殺したということを聞いたことは? Dさん:あります。殺し方も、拷問、死体処理も話していました 検察官:本当だと思った? Dさん:思っていました。ヤクザのエピソードはしみじみと話していました。 家に日本刀や刀が置いてあって、そういう世界の人だと思っていました。 本多被告が「服従できないなら殺す」などと言いながらDさんともうひとりの被害女性の後頭部に日本刀の刃を当てたこともあった。 そして、「生涯尽くすことを誓います」「誓約書を守れなければ、どんな処罰も受けます」「裏切り行為はしない」などとする誓約書を書かされた。 最初は抵抗したが徐々に抵抗できなくなっていった。 Dさんは今、こう話す 「私たちは、本多被告に家族のことを知られていて、 家族が本多被告と面識のある従業員もいた。 全部握られていたので、被害を誰かに言ったら、 自分だけじゃなくて家族も殺されてしまうと思っていた。 だから・・・言えなかったです」