裁判長:「公訴事実と違うところはありますか?」 女の被告(20):「ないです」 裁判長:「間違いありませんか?」 女の被告(20):「間違いないです」 裁判官の問いかけに、か細い声で答えたのは、犯行当時19歳だった女の被告(20)です。 当時17歳の女子高校生が橋から川に落とされ、殺害された事件の裁判員裁判。 初公判を前に、旭川地裁には26席分の傍聴券を求めて、約150人が列を作りました。 被告は2024年4月、殺人の罪などで起訴されている内田梨瑚被告(22)らと共謀し、北海道留萌市で当時17歳の女子高校生を車に監禁。 その後、旭川市郊外の神居古潭で、女子高校生を橋の欄干に座らせて「落ちろ」「死ねや」などと脅し、川に転落させて殺害した罪などに問われています。 犯行当時19歳の『特定少年』だった被告(20)については、少年審判で刑事処分が相当として検察官送致され、旭川地検が被告の氏名を公表し、起訴しました。 事件の主犯とされる内田梨瑚被告(22)は、逮捕時に「橋に置いてきただけで、落ちたところは見ていない」と容疑を否認しています。 一方、犯行当時19歳だった女の被告(20)は、弁護人に宛てた手紙に、次のように記しています。 弁護人に宛てた手紙 『リコさんのことを止めていれば、このようなことにはならず、被害者の子は今頃生きていて、普通に暮らしていたかもしれない。でもリコさんと私は結果、亡くならせてしまったんです」 「償っても償いきれないほどの思い罪を犯してしまって、(被告の名前)はどうしたら良いのでしょう』 冒頭陳述で検察側は「被告は内田被告の『舎弟』として買い物を代行するなどの関係だった」と指摘。 犯行については、「内田被告と同様の役割を主体的に果たし、恩義や仲間意識から犯行に加担した」と主張しました。 一方の弁護側は、「内田被告を慕っていたのは事実だが、同時に恐怖心もあり、顔色をうかがいながら過ごしていた」と主張。 弁護側は「犯行の大半は内田被告の指示で、罪を認めて、深く後悔している上、まだ若く、更生できる」として情状酌量を求めました。 裁判は『量刑』が争点となっていて、28日は証拠調べなどが行われます。 堀啓知キャスター) 犯行当時、『特定少年』の19歳だった女の被告(20)は、27日の初公判で起訴事実を認め、弁護側は情状酌量を求めています。 今回の裁判員裁判について、福岡家庭裁判所小倉支部で少年審判の経験もある、札幌地裁の元裁判官、内田健太弁護士にポイントは解説してもらいます。 ■《今回の裁判のポイントとは》 内田健太弁護士(元裁判官) 少年の“重大事件”について、一般国民がどういう判断をするのかがポイントと考えています。 本件は少年事件なので、一度は家庭裁判所の裁判官の審理の対象となったわけですが、家裁の裁判官が、この事件については、少年法の保護ではなくて、一般の刑事事件と同じ処分が相当だとして、今回の裁判員裁判になっています。 事案は重大なんだけれども、被告人が『少年』という難しい要素がある事件を、裁判員がどう判断するのか、ここは着目したいと思っています。 ■《女の被告(20)が問われている罪》 堀内大輝アナウンサー) 犯行時19歳だった被告(20)は、内田梨瑚被告(22)と同じく【殺人・不同意わいせつ致死・監禁の罪】に問われています。 27日の初公判で、被告(20)は起訴内容を認めています。 弁護人に宛てた手紙では、自らの心境について、次のような言葉で綴っています。 ■《被告(20)が弁護人に宛てた手紙の一部》 『償っても償いきれないほどの重い罪を犯してしまった』 『この先、一生一人の女の子の命を奪ってしまったという責任と、重い罪を背負っていきたい』 堀啓知キャスター) 改めて『特定少年』とは、どういう位置づけなのか、内田弁護士に解説していただきたいと思います。 ■《「特定少年」の定義とは…》 内田健太弁護士(元裁判官) まずは、犯罪行為をした18歳と19歳を意味します。 もともと成人年齢は20歳でしたので、20歳未満は“未成年”として、“少年”も同様に20歳未満とされていました。 ただ成人年齢が18歳に下がりました。その際、少年の保護も18歳まで引き下げるべきではないかという議論もありましたが、民法が変わったとしても、少年の更生がすぐに変わるわけではありません。 そこで“少年は20歳未満”という部分を残して、民法上は18歳と19歳は“成人”であっても“少年”として扱われることになったわけです。つまり少年と大人の間の、18歳と19歳は“特定少年”と扱っています。 堀内大輝アナ) 特定少年がかかわった罪という観点からは、どうでしょうか? 内田健太弁護士(元裁判官) 特定少年と少年の違いで言うと『少年』は、刑を言い渡されるとしても『不定期刑』、何年から何年までの間という形になります。 一方『特定少年』の場合、刑事裁判になれば、成人と同じように刑は何年と言い渡されますし、起訴された場合、実名報道が解禁されることになります。 堀内大輝アナ) 犯行時19歳だった被告は『特定少年』であるわけですが、 裁判員や裁判官の判断、そして量刑に影響を及ぼすことはあるのでしょうか。 ■《量刑などの判断に影響を及ぼすことは…》 内田健太弁護士(元裁判官) 少年とはいえ重大犯罪であれば、一律に“厳罰と”いう流れがあることも事実ではあるものの、18歳、19歳は法律上は“少年”で“更生の可能性がある…”ということが基本理念です。 もちろん事案の重大性ということは、しっかりと判断されるべきです。 しかし、評議の中では、裁判官は、裁判員に少年法の考え方ということもしっかり伝えた上で、この事案に見合った刑とはどういうものなのかについて、適正な判断をしてもらいたいと考えています。 堀啓知キャスター) あくまでも少年法という考え方が、基礎にあっての判断ということが重要だということですね。 堀内大輝アナ) 同じく殺人などの罪で起訴されている内田梨瑚被告(22)については、まだ裁判の日程は決まっていませんが、関係者への取材では、公判では『否認』するとみられています。 27日に裁判員裁判が始まった被告(20)の主張と大きく食い違っていることについて、内田弁護士はどうみていますか? ■《内田梨瑚被告(22)の公判への影響は?》 内田健太弁護士(元裁判官) 一つの事案で、同じ罪に問われている被告が複数いる場合、どちらも「やっていない」と主張するか、あるいは「やっている」という前提で、被告同士が互いの責任を押し付け合うケースが多いんです。 しかし、今回の事件では、1人は認めて、1人は認めていないという、やや異例のケースと考えています。 ただ、27日から始まった当時19歳だった女の被告(20)自身は罪を認めているので、今回の裁判の中では『殺人』が成立することを前提に審理は進められていくだろうと見ています。 堀啓知キャスター) 『特定少年』である女の被告(20)の裁判員裁判は、来月7日に判決が言い渡されます。 ■【おことわり】 HBCでは、18歳と19歳の特定少年の被告を実名で報じるかどうか、事件ごとに判断しています。今回の事件は、1人の高校生の命が失われた結果の重大性、社会的な影響の大きさなどを総合的に判断した結果、地上波テレビ放送では実名で報じることにしました。なお、デジタル配信の記事は、半永久的に残るインターネットの特性を考慮して匿名で報じています。