青森県八戸市の「みちのく記念病院」の元院長らが逮捕された入院患者間の殺人の隠蔽(いんぺい)事件を巡り、県と八戸市は28日、同病院に対しそれぞれ改善勧告による行政指導を検討していると明らかにした。医療法に基づく臨時の立ち入り検査の結果、医師の勤務実態に判然としない部分があることや、病室を別の用途に使っている疑いがあることが発覚した。記録が確認できる書類と実際の状況に違いがないかなど、さらに精査を進める。 同日午前に宮下宗一郎知事、午後に熊谷雄一市長がそれぞれ県庁と八戸市庁で開いた会見で説明した。 14日の逮捕を受け、県と市はこれまで19、26日の2度、同病院に検査に入った。関係書類の確認や職員への聞き取りなどを行い、医療提供体制に問題がないか調べている。 県と市の説明を総合すると、検査時点で病床規模に対する勤務医数は充足しているが、医師が記録通りに働いていたかどうかは判然としないという。 熊谷市長は「医師の勤務状況について病院の管理体制に不備があり、事実関係の詳細な確認に至っていないことから行政指導を行うことを検討している」と表明した。医師の勤務実態を明確に示すよう改善勧告する方向という。 市保健所の担当者は、病室の用途など設備に関する許可を持ち、行政指導を出せる立場である県との調整が必要-とした上で、勧告を出す時期は「明言できないがなるべく早く」との認識を示した。 一方、これまでの検査の在り方について問われた宮下知事は「相手方(病院)の善意や協力に依存していて、うそやごまかしがないという前提だった」と指摘し、改善すべきだとの見方を示した。同病院に対しては「患者や家族、地域に対して説明責任を果たすことが大事だ」と強調した。 行政指導が検討されていることに対し、みちのく記念病院の担当者は電話取材に「どのような内容か分からないのでノーコメント」と話した。記者会見やコメント発表の予定はあるかと問うと「今のところは(予定は)ない」と答えた。