人身売買が問題視されているミャンマーの特殊詐欺拠点からは、外国人7000人以上が保護されたものの、母国への送還は進んでいません。その背景には国境で激化する内戦の影響もありました。 詐欺拠点の捜索指揮 「国境警備隊」幹部 「我々が日本人に『ミャンマーで何をしていたのか』と尋ねると、彼は『パソコンで事務作業をしていた』と答えました」 日本人の男について話すのは、ミャンマーの少数民族武装勢力「国境警備隊」の幹部です。 「国境警備隊」は先月26日、特殊詐欺の一大拠点があるミャンマー・カレン州で、この日本人の男(36)を発見し、拘束しました。 関係者によりますと、男は去年、札幌市内で勤めていた飲食店から売上金を盗んだ疑いで、北海道警が逮捕状を取っていました。事件の前、男は周囲にこう話していたといいます。 ミャンマーで拘束された男 「知人から『タイで詐欺をしないか』と誘われている」 記者 「男は中国人らとともに国境の川を渡って、対岸のミャンマーに入ったということです」 「国境警備隊」の幹部によると、男は今年1月にミャンマーに渡り、中国人らが管理する拠点で特殊詐欺に関与した疑いがあるということです。 一方、国境に点在する特殊詐欺拠点では、監禁されていたとみられる7000人以上の外国人が保護されましたが、母国への送還が進まず、ミャンマー側から動けない状態が続いています。 難航する理由のひとつが、国境地帯での戦闘の激化。 ミャンマーのカレン州ではきのう、国境から近い場所で、反政府武装勢力KNLA=カレン民族解放軍などがミャンマー軍と交戦していました。様々な少数民族や民主派の勢力が入り乱れるカレン州は、4年前の軍事クーデター以降、激戦地のひとつとなっています。 タイ側の住民 「怖いです。タイ側にも(砲弾が)落ちてくるかもしれません」 ミャンマー軍事政権は、詐欺拠点から保護された外国人らを引き渡すよう武装勢力側に求めていますが、DKBA=民主カレン慈善軍は「戦闘に巻き込まれるリスクが高い」として、「外国人を移送できない」と話します。 混乱が続くミャンマーの国境地帯では、いまだ多くの外国人が詐欺拠点に監禁されているとみられ、日本人も残っている可能性があります。