「アジアのトランプ」比・ドゥテルテ前大統領なぜ逮捕?背景に現職マルコス氏との確執…国内の“分断”加速か

■首都マニラの空港、移送先の空軍基地には多数の警察官 11日早朝、フィリピンの首都マニラの空港はものものしい雰囲気となっていた。到着ゲートには多数の警察官が待機。集まった報道陣が待ち構えていたのは、滞在先の香港から帰国する前大統領のドゥテルテ氏だ。というのも、数日前からICC(国際刑事裁判所)がドゥテルテ氏に対し逮捕状を出したとの情報が広がっていたのだ。ドゥテルテ氏は香港で開かれたフィリピン人移民らの政治集会に参加していたが、当初は逮捕を免れるために逃亡したのではないか、との臆測も流れていた。 マニラに到着したドゥテルテ氏は報道陣の前に姿を見せず、そのまま空軍基地に連行された。そして、大統領府はまもなく「ドゥテルテ氏をICCの逮捕状に基づき逮捕した」と発表した。空軍基地の入り口は多くの警察官が配置されるなど、厳戒態勢となっていた。 ドゥテルテ氏の長女で副大統領のサラ氏は、ドゥテルテ氏がICCの本部があるオランダ・ハーグへ移送されると明らかにしており、今後の動向に大きな注目が集まっている。 ■“麻薬戦争”とは…3万人が殺害されたとの推計も 南部ミンダナオ島のダバオ市長を経て、2016年に大統領に就任したドゥテルテ氏は、公約である「麻薬犯罪の撲滅」を最優先課題に掲げていた。同年に行った演説では次のように述べている。 フィリピン・ドゥテルテ大統領(当時) 「麻薬戦争は今まさに起きている。私の任期の最後の日まで、密売人が路上からいなくなるまで、麻薬王が殺されるまで…この方針は続くだろう」 強力なリーダーシップで国民から高い支持を集める一方、数百万人の麻薬中毒者を「喜んで殺す」と発言するなど、過激な物言いがたびたび物議を醸した。アメリカ映画の主人公になぞらえ「フィリピンのダーティハリー」と呼ばれたほか、「アジアのトランプ」「暴言王」といった様々な異名をもっていた。 薬物の密売人らを殺害することも事実上容認され、警察官は路上にいた密売人を、十分な証拠も裁判もないままに、その場で射殺するケースが相次いだ。無実の市民が殺害されたとの報告もあった。また、警察だけでなく、自警団を名乗る正体不明の殺し屋集団も殺人に加わっていたとされている。“麻薬戦争”によってフィリピン政府は6000人あまりが死亡したと発表したが、人権団体などは犠牲者が3万人に上るとの推計も出している。

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