『TBSドキュメンタリー映画祭 2025』が3月14日(金)、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開幕した。同日、上映された『REASON~あの日、HIPHOPに憧れた少年たち~』の舞台挨拶が行われ、本作に登場するラッパーのYAS(MC)、紅桜(MC)、VOCA Luciano(MC)、HKR(MC)、DJ KAJI(DJ)が活動拠点の岡山県から集結。映画祭アンバサダーを務めるLiLiCo、嵯峨祥平監督とともに、作品に込められた思いを語った。 ラッパー紅桜の服役後に密着した『ダメな奴』(2024年公開)の続編。今回は逮捕や借金など、波乱万丈の人生を歩み、現在は、昼に解体業、夜は深夜までコンビニやバーでアルバイトをする48歳のラッパー、4PRIDEが“歌い続ける理由”に迫る。なお、主人公である4PRIDEは「娘の卒業式があるため」という理由で、舞台挨拶は欠席。家族愛の深さが示された。 LiLiCoは「前作を見て号泣した。何が刺さったのか自分でも謎なくらい、(彼らの)人間関係に感動した」と振り返り、本作についても「みんなの言葉に笑ったり、共感したり。インタビューですごくいいことを言っているんですよ」と大満足の様子。紅桜夫妻の絆にも触れ、「私自身は硬い人間で、ノーなものはノーというタイプなんですが、そんな私の中に許すという気持ちを作ってくれた」と、ドキュメンタリー映画を通した価値観の変化も告白していた。 一方、前作の主役である紅桜は、「地元の銭湯に行くと『スターが帰ってきたぞ』と言われることも。僕らは音楽をやってるだけの人間だけど、普通の人たちにも届いているんだと思った」と、反響の大きさにうれしい悲鳴。「どれだけカッコいい音楽をやっても、どれだけ生き様を歌っても、聴いてくれる人がいないと意味がないです。これからも俺たちがダサかったら笑ってもらって、カッコ良かったらカッコいいと返してもらえれば、それが活動の源になります」と呼びかけた。 ほかのメンバーも「ヒップホップを取り上げてもらえて、ありがたい」(YAS)、「めっちゃ感動しました」(VOCA Luciano)、「普段はふざけている自分たちの真面目な部分も見てもらえて、いい経験になった」(HKR)、「僕らにとっての当たり前も、第三者目線で見ると、感動できる部分がある」(DJ KAJI)と、皆一応に、映画出演が転機になったようだ。 前作に引き続き、監督を務めた嵯峨は「このメンバーは誰ひとり、カッコつけずに、さらけ出してくれるのがありがたい」と感謝の言葉。LiLiCoが「まだ見たい。来年もう1本作れるんじゃないか」と期待を寄せると、「彼らの意志を継いで、子ども世代がラッパーになっていたりするので、その歴史も撮影できれば」と抱負を語った。 締めくくりに、LiLiCoは「ドキュメンタリーは知らなかった世界を知る大きなチャンス。興味のないテーマであっても、見れば新しい扉が開くと思うので、ぜひこの映画祭でたくさんのドキュメンタリーに触れてみてください」と、アンバサダーとして映画祭をアピールしていた。 今年で第5回目を迎える本映画祭は、3月14日(金) より東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌の全国6都市で順次開催。現代を取り巻く重要な社会問題を考える「ソーシャル・セレクション」、多様な生き方や新たな価値観を見つめる「ライフ・セレクション」、表現者や歴史的発見を通して新たな感性に出会える「カルチャー・セレクション」の3つのテーマに沿って、14作品を選出するほか、「戦後80年企画」と題して戦時下や戦後を生きた人々を映した3作品も特別上映する。 取材・文=内田涼 『TBSドキュメンタリー映画祭 2025』 3月14日(金)〜4月3日(木) 東京・ヒューマントラストシネマ渋谷 3月28日(金)〜4月10日(木) 大阪・テアトル梅田 3月28日(金)〜4月10日(木) 愛知・名古屋センチュリーシネマ 3月28日(金)〜4月10日(木) 京都・アップリンク京都 3月28日(金)〜4月10日(木) 福岡・キノシネマ天神 4月5日(金)〜4月11日(金) 北海道・シアターキノ