今年の米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」の共同監督であるパレスチナ人のハムダーン・バラール氏が24日、イスラエル当局に拘束され、翌25日に釈放されたことが分かった。 ハムダーン・バラール氏は「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」の共同監督。ヨルダン川西岸にある故郷でイスラエル人入植者の襲撃があり、隣家が襲われる様子を撮影後、自身も暴行を受けて負傷したという。 「何が起きたか記録するため現場へ向かい、2ショットほど撮影した。入植者らが増え、攻撃し、石を投げ、全てを破壊しているのを見て家に戻った。家族や子どもにも被害が及んでいるのではないかと非常に怖かった」 バラール氏はヘブロンの病院でロイターの取材に応じた。入植者とイスラエル兵の両方から殴打されたと述べ、家族の身を案じ、恐怖を感じたと語った。 「家族や子どもたちが家にいて、守らねばならない状況を想像してほしい。ドアを閉めて外に出て、兵士や入植者が向かってくる中、その様子を撮影した。その時、私は家族と子どものことばかり考えていた」 イスラエルの警察当局は、バラール氏ら3人を逮捕した。イスラエル軍はパレスチナ人がイスラエル人の車両や治安部隊に投石したため、警察と兵士が介入したと述べた。軍は声明で「石を投げた疑いのあるパレスチナ人3人と、衝突に関与したとみられるイスラエル人1人を逮捕した」と発表した。 「ノー・アザー・ランド」は、パレスチナ人コミュニティーの強制退去などを描いた作品。パレスチナ人とイスラエル人の監督が共同で製作した。 欧州諸国やバイデン米前政権は、ユダヤ人入植者に厳しい制裁を科してきたが、トランプ氏の大統領就任後、米国による制裁は解除された。