子どもがスマホなどでアダルトコンテンツを見ることは、どんな影響があるのか。性犯罪加害者への性教育に携わる、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんと助産師の櫻井裕子さんは「子どもたちは、性教育が行き届かないまま、スマホの中のアダルトコンテンツに触れてしまう。しかしその中で女性は『モノ化』されており、暴力的な行為をされても喜んでいるように演じている。子どもたちには『ネットなどには過激なポルノがあるけど、つくりもの。安易にマネするのは危険なこともある』とどこかで伝える必要がある」という――。(第1回/全3回) ※本稿は、斉藤章佳・櫻井裕子『性的同意は世界を救う 子どもの育ちに関わる人が考えたい6つのこと』(時事通信社)の一部を再編集したものです。 ■子どもが性を学ぶツールはほぼAVという現実 【櫻井】中高生が性に関する情報をどこから得ているかというと、「ネット」と「友達」が圧倒的多数です。 【斉藤】ああ、例のグラフですね。上が中学3年(男子)のデータです。44.9%がSNS。下の棒グラフは高校1年生(男子)です。 【櫻井】子どもによっては、一部に保護者のコレクションDVDやエロゲ(ゲーム)が出てきます。やはり、動画になって音声が入るというメディアが、興奮度を高めるのでしょう。 【斉藤】今の子どものたちの周辺にあるアダルトコンテンツは、嗜癖行動の観点からは、報酬系を効果的に刺激し、中毒性が高まる要素が満載です。 【櫻井】斉藤さんたちと一緒に行っている性犯罪再犯防止プログラムでは、性教育のイメージと性教育の受講歴を必ず聞くのですが、そこでもAVが出てこないことはありません。現在の一般的な性教育ではセックスについて語られないけれど、多くの子が本当に知りたいのはセックスなのだと感じます。隠されれば隠されるほど興味が湧くものです。 【斉藤】例えば、セックスの順番からどうやって終わるかなどを、どこで学習するかというと、AVしかないのが現状でしょう。 【櫻井】しかも、今の子たちはスマホで手軽に、「ショート動画」で一番過激な部分のみを見ます。「出会って4秒で合体」といったタイトルがありますが、そこにコミュニケーションは一切ありません。 セックスはコミュニケーションそのものであるはずなのに、動画で学ぶと、いろいろな問題が引き起こされてしまいます。