トランプ大統領就任直前の1月19日に始まったイスラエルとハマースのガザ停戦は、イスラエル軍による攻撃再開で崩壊し再びジェノサイドが襲いました。もっとも「停戦中」ですら170名が殺されており、3月18日はラマダンの夜明け前の食事時に100機の航空機でガザ各地を空襲し174人の子どもを含む427人が殺されたとのことです。「ネタニヤフは絶滅戦争を再開することで己の政権を救おうとしている」とパレスチナ民族評議会議員のムスタファ・バルグーティが非難した通りです。極右のスモトリッチ財務相は殲滅戦争の再開に「これまで行われてきたこととは全く異なるものになる」と大喜び。停戦を非難して政権から離脱したベングビール元国家安全保障相はネタニヤフが約束した資金援助と攻撃再開の確認の上で政権に復帰しました。 42日間のガザ停戦合意の第一段階の終了日は丁度断食月(ラマダン)の始まる3月1日。イスラエルは「ハマースが米国提案の第一段階の停戦延長を拒否した」として3月2日から約220万人のパレスチナ人が住むガザ地区への食料、電気、燃料、医薬品すべての物資の搬入を停止し、トランプ政権と一致して、ハマースに停戦延長を受け入れるよう圧力をかけました。イスラエル政府は停戦に合意した当事者でありながら960回も合意を破り、3月1日以降に始まる停戦合意の第二段階に行かせまいと第一段階の延長を主張。第二段階では恒久停戦に向けた協議を開始し、残りの人質の解放、イスラエル軍の全面撤退、第三段階ではガザの再建協議と人質の遺体返還の予定でした。つまりイスラエル軍は第二段階のエジプト国境地帯のフィラデルフィア回廊から撤退せず、戦争の終結を発表せず、ガザ地区への人道支援搬入を突如ストップさせ、搬入と引き換えに人質の釈放だけを要求する作戦に転じました。 ネタニヤフは、トランプの「力による平和」という人質釈放の横やりを利用しながら、「ハマース掃討」の名で攻撃を再開、パレスチナ人追放とガザ再占領を狙っています。トランプ政権がハマースと直接コンタクトし、米イスラエル二重国籍者の釈放交渉を始めたこともイスラエルが攻撃を再開、激化した理由でしょう。西岸地区でも酷い虐殺が続いたままです。 ネタニヤフは、自身の汚職問題の裁判に出廷せざるを得ず、政権としては2025年度予算案をクネセト(国会)で採決するという問題にも直面していました。この予算案は3月末までに承認されなければ政権は自動的に倒れ、早期選挙が実施されることになるからです。超正統派ユダヤ教徒の政党は、彼らに対する徴兵免除の法律が可決されなければ予算案に賛成票を投じないし政権を離脱すると警告していました。議会でも政権でも危機に直面し経済の悪化も続き、ネタニヤフは己の政権を救うことを第一にジェノサイドに向かったのです。案の定ベングビール率いる「ユダヤの力」は資金援助も約束されて政権に復帰し、これで予算案も通り政権崩壊は免れるようです。 そんなイスラエルは、自身が宣伝用に開発したAIにまで批判される始末です。イスラエル紙ハーレツによると、ソーシャルメディア上でイスラエルを宣伝するために設計されたAIチャットボット「FactFinderAI」が、自らを親パレスチナ・マシーンに変身させたとのことです。このボットはX(旧ツイッター)上で、反イスラエルストーリーを生成し、ガザ住民との連帯を呼びかけ、パレスチナ人支援のために寄付できる慈善団体をフォロワーに紹介しているとハーレツ紙は報じました。ネット上でイスラエル寄りの意見を述べるために設計された「親イスラエル」のアカウントを「親パレスチナ」の意見に変えてしまったようです。ボットはイスラエル兵を 「アパルトヘイト・イスラエルの白人植民地支配者 」と呼び、ドイツに対しアイルランドやスペインにならってパレスチナ国家を公式に承認するよう促したそうです。情報空間に溢れるビッグデータにはイスラエル批判が如何に多いかを示して余りあるエピソードです。 3月8日の国際女性デーを機に、ガザ地区のパレスチナ情報局は、イスラエルがパレスチナ女性に対して引き起こした犯罪統計を発表しました。これによると、2023年10月7日から2025年1月19日までの間に、1万2316人のパレスチナ人女性が殺され、イスラエル軍の攻撃で2000人以上のパレスチナ人女性と未成年女子が手足の切断などの障害を負ったとのことです。痛ましい現実…。ジェノサイド加担を日本はやめよ!と訴えねば…。 今、日本では若者が中心となって「私たちの年金をジェノサイドに使うな!」と訴えています。日本の年金基金が約1兆円もイスラエルの軍需産業やイスラエルへの武器を製造する企業に投資されていることが明るみに出て、若い人々が告発し投資を引き揚げるよう訴えています。パレスチナ連帯はまた日本を救うアクションでもあります。