罪を犯した人の更生を支える保護司を中核とする更生保護制度が始まり、今年で75年。近年では担い手不足が叫ばれており、今月には保護司制度を見直す最終報告書が公表された。そんな節目の年に、保護司が更生支援をしていた男に殺害される事件が発生。善意のボランティアで成り立ってきた制度だけに法務・検察当局に与えた衝撃は大きく、制度変革の必要性を改めて突きつけられたといえそうだ。 ■「評価されない」 「痛ましい事件があったが、全国の保護司の方が安心して役割を果たせるよう後押ししたい」 10月4日、牧原秀樹法相は、保護司制度の見直しを議論してきた有識者検討会がまとめた最終報告書が提出されたことを受けて、神妙な面持ちでこう述べた。 「事件」とは、今年5月に起きた保護司殺害事件を指す。 5月26日、飲食店を経営する保護司の新庄博志さん=当時(60)=が大津市の自宅で刺殺されているのが見つかり、新庄さんが面接していた保護観察中の男が容疑者として浮上。滋賀県警は同28日、銃刀法違反容疑で男を現行犯逮捕し、6月8日に殺人容疑で再逮捕した。 男は令和元年6月、強盗罪で大津地裁から懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の有罪判決を受けていた。新庄さんは、1人でこの男の更生支援を担当していた。 男は現在、大津地検が今月21日まで精神鑑定のため留置中。新庄さんに紹介された建設会社を数カ月で退職し、周囲に「頑張って仕事をしているのに正当な評価をされない」と不満を漏らしていたという。投稿したとされるX(旧ツイッター)には「全然保護しない」と、保護観察制度を揶揄(やゆ)する発言もあった。 ■入口支援に限界 非常勤国家公務員である保護司は、地域のボランティア。業務内容に応じて実費弁償金が支払われるものの、基本的に無報酬だ。 そんな保護司を中核とする更生保護制度について法務省は、犯罪者や非行少年を適切に処遇することで「再犯を防ぎ、非行をなくし、これらの人たちが自立し改善更生することを助けること」と定義している。 全国に4万7千人いる保護司や、犯罪者との面会などはしないものの、その他の更生支援を担う13万人の更生保護女性会員など「多くの民間人の協力に支えられている」(法務省担当者)。