神奈川県川崎市で岡﨑彩咲陽(あさひ)さん(20)の遺体が発見された事件で、岡﨑さんは死体遺棄の疑いで逮捕された白井秀征容疑者からのストーカー被害を、何度も警察に通報していた。2人は2024年4月ごろから交際していたが、白井容疑者のDVにより関係が悪化。岡﨑さんが「刃物を向けられた」と被害届を出し、後に取り下げたこともあった。 また捜査関係者により、12月26日の聴取で、白井容疑者自らがストーカー行為を認めていたことも新たにわかった。警察は「捜査に影響があるため(公表を)控えた」としているが、結果的に行方がわからなくなってから約4カ月後に、岡﨑さんは遺体で見つかった。 元神奈川県警捜査1課長の鳴海達之氏は、古巣の捜査について「慣れと先入観から踏み込んだ捜査ができていない」と、調べが遅れた理由を指摘する。「交際が続いているのか、解消しているのか。交際が続いているならストーカー事案ではないと判断するため、踏み込めなかったのかもしれない」。 今回の事件に「最悪の結果となったことについて、残念でならない」との感想を抱く鳴海氏は、「警察が個々具体的に対応していたことは認められるが、もう少し突っ込んだ対応をしてもよかったのではないか。白井容疑者は12月に、岡﨑さんが避難していた祖母宅の周辺をうろついていた。その時に保護するべきだった」という思いが一番強いという。 被害届を受理した時点では、刑事課が担当するそうだ。「事案の内容にもよるが、今回は刃物を示した暴力行為と処罰に関する法律違反で、通常であれば、1〜2人で捜査すると思う。警察署の規模によって、刑事課の署員数も決まっているため、全員がこの事件に集中することはない」。 また、鳴海氏は「ストーカーの相談はほぼ毎日ある」としつつ、「今まで自分たちは殺人まで発展するような事案を扱ったことがない」となれば、そこに“慣れ”が生まれると、鳴海氏は語る。「『一件一件に命がかかっていて、しっかり対応しないといけない』という気持ちを持ち続けないといけないが、年数がたち、多くの件数を扱うと、だんだん薄くなってきてしまい、慣れや『今回もそんな風にはならないかも知れないよね』という先入観になってしまう」。 加えて、法的な課題として、「ストーカー規制法は、交際中の男女には適用できない。きっぱり別れてもらい、交際していないところからスタートしないと適用が難しい。今回のように『別れた』『復縁した』が繰り返されると、ストーカー行為があったときに、どちらの状態かわからず、ストーカー規制法を適用する判断が難しい」といった事情もある。 ストーカー規制法は2000年に施行され、つきまといや待ち伏せ、位置情報の無承諾取得などのストーカー行為を規制し、被害者の保護と生活の安全を目的とする法律だ。つきまとい行為として「メールの連続送信」や「SNS」も規制対象となり、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。 しかし鳴海氏によると、「この法律にはあまり即効性がない」という。「“警告”は被害者の承諾があれば、警察がすぐに書面でも口頭でも発することができる。ただ、その先の“禁止行為”は、警告2回の後、行政命令として公安委員会の手続きがあり、だいたい1カ月ほどかかる。緊急時には“聴聞”の手続きをやらなくて良いとなっているが、それでも2週間ぐらいかかるのが現状だ」と解説した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)