中国の「血の同盟国」だった北朝鮮が「負債」に…関係悪化の陰にあの国の存在

中国東北部・瀋陽で4月下旬、北朝鮮のIT専門家がドローン技術関連の機密を盗んだとして逮捕されたもようだ。 韓国・聨合通信の第一報によると、容疑者は北朝鮮のミサイル開発機関の関係者で、中国国内で活動する広範なネットワークの一員だったらしい。これを受けて、北朝鮮は同じ場所で活動していたIT技術関係者全員を帰国させたという。 この記事はその後、中国の複数のネットメディアで配信された。中国での検閲の厳しさを考えると、当局の黙認があったとみていい。 中朝関係は「血の同盟」とされてきたが、ここへきて不協和音が目立ち始めている。特に中国側は北朝鮮とロシアの関係強化に不満を募らせているようだ。 北朝鮮は長年、中国にとって安全保障上の緩衝材であり、自国の勢力圏の一部と見なされてきた。朝鮮半島北部が敵対勢力の支配下に入れば、将来の軍事的脅威になりかねない。中国が朝鮮戦争(1950~53年)に介入した理由の一端もここにある。 一方で中国は、北朝鮮の核武装への野心に悩まされてきた。北朝鮮は2006年以降、何度も核実験を行い、現在では韓国や日本、この地域の米軍基地を攻撃可能な核兵器を保有しているとみられている。 中国は地域の平和と経済成長の両面から、朝鮮半島の非核化と安定を支持している。日米韓と同じく核拡散に反対の立場で、北朝鮮の核実験がアメリカの軍事行動を誘発したり地域の軍拡競争の引き金になることを恐れている。 だが北朝鮮にすれば、体制存続と独立のために核兵器は必要不可欠だ。さらに中国の影響力を弱めることもできる。 核問題をめぐる緊張にもかかわらず、中国は戦略的理由から北朝鮮を支持し続けてきた。しかし、ここ数年の北朝鮮は石油を中心にロシアからの輸入を増やしている。 冷戦期の北朝鮮とロシアは緊密な同盟関係にあった。1991年に旧ソ連が崩壊すると関係は冷え込んだが、最近は欧米に対する共通の敵意が両国の距離を縮めている。22年のウクライナ侵攻後のロシアにとって、北朝鮮は兵士や弾薬の重要な供給国になっているとみられる。 中国もウクライナ侵攻後のロシアと友好関係を保っている。ではなぜ北朝鮮とロシアの接近にいら立つのか。 第1に、中国は両国の接近を、北朝鮮の主要な庇護者という自国の伝統的役割に対する挑戦と見なしている。今の北朝鮮は中国の援助に依存する一方で、自主路線の拡大を目指しているように見える。 ロシアと北朝鮮の接近は、中国を含む「動乱の枢軸」3カ国に対する欧米の懸念をあおることにもなる。欧米や日韓両国に敵対的姿勢を続ける北朝鮮と異なり、中国はウクライナ戦争中のロシアへの支援を限定的な範囲にとどめ、3国同盟の一員と見られることを慎重に避けている。 今回のスパイ疑惑が浮上したタイミングも意味深長だ。北朝鮮はその前日、ロシアの戦争を支援する目的で自国兵士を派遣したことを初めて公式に認めている。 今の北朝鮮に中国の意向に従う気配はほとんどない。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は4月末、新型駆逐艦からのミサイル発射実験を視察したばかりだ。 中国は依然として、北朝鮮を北東アジアの重要な緩衝材と見なしている。だがロシアとの結び付きを強め、ますます挑発的になるにつれ、戦略的資産というよりむしろ負債に映り始めたかもしれない。 The Conversation Linggong Kong, Ph.D. Candidate in Political Science, Auburn University This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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