【05月30日 KOREA WAVE】韓国検察が、ユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏に捜査の照準を合わせつつある。当初、地方選の公認に絡む違法資金の授受を軸とした捜査だったが、高額な贈答品を巡るロビー疑惑に発展。キム・ゴニ氏の最側近とされる「秘書3人組」の関与も明らかになってきた。 この一連の捜査は、韓流スターのペ・ヨンジュン氏が投資したことを宣伝して300億ウォン相当を集めたとされる仮想通貨「クイーンビーコイン」=別名「ヨン様コイン」=事件から派生した。ソウル南部地検仮想資産合同捜査部が押収した関係者の携帯電話から、シャーマン「乾真法師」として知られるチョン・ソンベ被告による公認工作のやり取りが発覚した。 チョン・ソンベ被告は2018年、地方選挙に出馬した政界関係者から1億ウォンを受け取り、与党「国民の力」のユン・ハンホン議員に公認を依頼していた疑惑が浮上した。検察は昨年12月、チョン・ソンベ氏を政治資金法違反の疑いで逮捕・家宅捜索した際、韓国銀行印が押された「帯封つき5000万ウォン」の札束や、与野党の議員、大企業役員、検察・警察関係者の名刺の束を押収した。 また、チョン・ソンベ被告のスマートフォンからは選挙に関する働きかけを示すメッセージが複数見つかっている。2022年3月にはユン・ハンホン議員に対して「頼んだ3人のうち1人しか通っていない」と不満を伝えるメッセージを送っていた。2人は過去1年で60回以上通話していたという。 さらに注目を集めるのは、キム・ゴニ氏への高額贈答品の受け渡しだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の幹部が、政府ODA案件(カンボジア事業)の受注を狙い、シャネルバッグ2点(802万ウォンと1271万ウォン相当)、6000万ウォン超のグラフ社製ダイヤモンドネックレスなどをチョン・ソンベ被告経由でキム・ゴニ氏側に贈った疑いがある。キム・ゴニ氏側はこれを否定している。 この過程で浮上したのが▽キム・ゴニ氏が経営する「コバナコンテンツ」の元幹部で大統領室行政官を務めたユ・ギョンオク氏▽チョン元行政官(同じくコバナコンテンツ出身)▽チョ元行政官(元「自由韓国党」議員秘書)――の「ドアノブ3人組」とされる側近秘書らの関与だ。 ユ・ギョンオク氏は、統一教会側から贈られたシャネルバッグを2022年4月と7月に、85万ウォンと200万ウォンの追加費用を支払って別のシャネル商品に交換していたとされる。その差額はチョン・ソンベ被告が現金で補填していた、とユ・ギョンオク氏は供述している。バッグの受け渡しは「キム・ゴニ氏は知らなかった」と強調している。ただ当時、ディオールのバッグ(約300万ウォン)を別の宗教関係者から受け取った際にもユ・ギョンオク氏が同席していた。 またチョ元行政官は、民間と政府機関の間で陳情を取り次ぐ「橋渡し役」を果たしていたとされる。 チョン元行政官もバッグの授受があった当時、チョン・ソンベ被告側と頻繁に連絡を取っていた。 チョン・ソンベ被告は当初、「バッグは渡していない」と主張していたが、交換記録などの証拠が浮上すると「ユ・ギョンオク氏に頼んだが、紛失した」と証言を翻した。 検察は、バッグの所在追跡とともに、今後、関係者を再度召喚し、取り調べをする可能性がある。また、証拠隠滅の恐れや、キム・ゴニ氏を免責する目的で口裏合わせをした疑いがあるとして、チョン・ソンベ被告の再逮捕とキム・ゴニ氏への直接的な捜査も視野に入れている。 現行法では、キム・ゴニ氏が公職にない場合でも「第三者を介した職務関連の金品授受」が立証されれば、特定犯罪加重処罰法上のあっせん収賄罪が適用される可能性がある。法曹界では「配偶者であっても処罰対象になり得る」との見方が強まっている。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News