トランプ氏が誕生日に軍事パレード アメリカ各地では「王はいらない」抗議

アメリカで14日、ドナルド・トランプ米大統領が首都ワシントンで34年ぶりの軍事パレードを自分の誕生日に合わせて主催した。一方、全米各地で「No Kings(王はいらない)」抗議が行われた。 ワシントンで行われた軍事パレードは、アメリカ軍創立250年を記念。大統領は、軍事パレードの現場で抗議行動があれば「強力な威力」で対応すると警告していた。 パレードでは制服姿の兵士数千人が、数十台の戦車や軍用車両、マーチングバンドと行進。大統領は立ち上がって敬礼し、見守った。 トランプ氏は短い演説で、 「この国の兵士たちは決して諦めない。決して降伏せず、決して諦めない。戦って、戦って、戦う。そして彼らは勝利し、勝利し、勝利する」のだと強調した。 他方、全米で展開した「王はいらない」抗議では、ニューヨーク、フィラデルフィア、ヒューストンなどの都市で政治家や労働組合の指導者、活動家らが、トランプ大統領を批判するプラカードや国旗を掲げた。 全米抗議の主催者らは、国内数百カ所で抗議行動があり、数百万人が参加したと発表した。抗議活動の名称「王はいらない」の背景には、トランプ大統領が2期目就任以来、大統領権限を逸脱して国王のように強権をふるっているという批判がある。 ■虚栄心か、奉仕への感謝か 一部の政治家や元軍幹部は今回の軍事パレードを、大統領の虚栄心を満足させるための、高額なプロジェクトだと批判している。陸軍によると、その費用は2500万ドルから4500万ドル(約36億〜65億円)。 しかし、参加者の多くはBBCに対し、アメリカ軍に深い思い入れと結びつきがあるため、自分たちにとってこれは軍隊をたたえるためのものだと話した。 メルヴィン・グレイヴス氏は、自分がヴェトナム戦争から帰還した際にパレードはなかったため、これがそれに近いものだと述べた。 グレイヴス氏は、今回のパレードには政治的側面があることを認めながらも、「これは国に奉仕した人々を称え、その奉仕に感謝するためのものだ」と話した。 アメリカで前回行われた軍事パレードは、湾岸戦争におけるアメリカ主導の勝利を祝うため、1991年6月に当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が開催した。米紙ロサンゼルス・タイムズの当時の報道によると、退役軍人をたたえるために20万人がパレードに参加し、花火打ち上げの時点では最多の80万人に達したという。 14日のパレードの参加者数は、雨天と大雨の予報もあり、34年前に比べるとはるかに少なかった。 若い退役軍人にとっては、初めて見る軍事パレードだった。2014年から2017年まで陸軍に勤務し、韓国と北朝鮮の国境での任務も経験したヴァージニア州出身の元歩兵、ブライアン・エンジェル氏はBBCに対し、こうしたことをもっと見たいと話した。 「軍のあらゆる部門が、何らかのパレードや表彰を受けるべきだ」。 専門家の中には、米軍兵士が首都を行進する一方で、大統領がロサンゼルスでの抗議行動に対処するために軍隊を派遣していることに、違和感を指摘する声もあった。 安全保障専門家のバーバラ・スター氏はBBCに対し、「移民問題をめぐる論争と、軍服を着て武装した兵士を現場の統制に投入している現状が、世論を二分している。その状況の最中なだけに、軍がおそらく当初想定していなかった形で、このパレードに悪影響が及んでいると思う」と語った。 ■移民対策を理由に抗議 フィラデルフィアでは、大勢がラヴ公園に集まり、「王はいらない」抗議に参加した。看護師のキャレン・ヴァン・トリーストさん(61)は、「私たちは民主主義を守らなくてはならないと、ひたすらそう感じている」とAP通信に話した。ヴァン・トリーストさんはこの日の集まりに参加した理由の一つとして、公立医療機関の人員をトランプ政権が削減したことを挙げた。 ロサンゼルスではこの日、特に大群衆が集まって抗議した。非正規移民摘発とそれに対する抗議が続くなか、現地当局は厳戒態勢を敷いていた。 公民権団体「ブラウン・ベレー」に所属するホセ・アゼトクラさんは14日、はロサンゼルスでBBCに対し、自分が通りでの抗議行動に参加したのは移民問題が理由だと話した。 「(摘発は)厳しいのではなく、邪悪だ。家族を引き裂いてはいけない」と、アゼトクラさんは述べた。 ロサンゼルスの連邦ビルの近くでは抗議者と州兵の間で衝突があり、群衆を解散させるために催涙ガスが発射された。 しかし、少し離れた場所では、数百人もの抗議者が平和的に行進を続けていた。 「王はいらない」抗議はミネソタ州でも予定されていたが、州議会の議員2人とそれぞれの家族が狙われる事件が発生し、容疑者の車内に抗議集会のチラシが見つかったため、集会は中止になった。事件では、景観を装った男に下院議長と夫が殺害され、上院議員と妻が負傷した。 同州のティム・ウォルズ知事は、容疑者が逮捕されるまで抗議活動に参加しないよう人々に呼びかけたが、それでも数千人が集まり暴力に抗議した。 ■移民政策を世論は支持 この日の「王はいらない」抗議は、トランプ大統領が再選されて以来、最大規模の抗議行動だった。しかし、世論調査は政権の移民政策が国民の間で広く支持されていることを示している。 先週のCBSとユーガヴの調査では、アメリカに不法滞在している移民を国外追放するというトランプ大統領の政策をアメリカ人の54%が支持し、46%が不支持と回答した。 また、アメリカ人の42%はトランプ大統領の政策で自分たちの安全が確保されていると答え、53%はトランプ大統領が危険な犯罪者の国外追放を優先していると答えた。 (英語記事 Mass protests against Trump across US as president holds military parade)

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