覚醒剤逮捕クルド人男の国賠訴訟、弁護団「逮捕と判決は関係ない」原告不在で一部勝訴 「移民」と日本人

入管施設への長期収容が国際人権規約に反するとして、トルコ国籍のクルド人とイラン人が国を相手に計約3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であり、本多智子裁判長(舟橋伸行裁判長代読)は人権規約違反は退けたものの、収容に一部違法行為があったとして国に慰謝料など計120万円の支払いを命じた。原告のうちクルド人の男は出廷しなかった。覚醒剤取締法違反(所持)容疑で警視庁に逮捕され、今月2日に起訴されている。 訴訟で原告側は、裁判などの審査を経ないまま収容する入管難民法自体が、国際人権規約に反すると主張。判決は、釈放を求める訴訟により裁判を受ける権利が保障されているとして退けた。 一方で、医師が収容を避けるべきとの意見を出していたにもかかわらず収容したケースがあったとして、人権規約や入管法が禁じる不当な身柄拘束に当たると認定。国に対し原告2人にそれぞれ慰謝料50万円と弁護士費用10万円の計60万円ずつの支払いを命じた。 出入国在留管理庁は「主張が一部認められなかった。判決内容を精査し、適切に対応する」としている。 ■石川大我氏も「コメントできない」 クルド人の男は東京都内在住のデニズ・イェンギン被告(46)。5月12日、新宿区の路上で覚醒剤を所持していたところを現行犯逮捕された。 この日の判決後、都内で開かれた原告側の記者会見には、もう一人の原告でイラン国籍の男性(56)と弁護士6人が出席。判決の意義について詳しく説明しながら、デニズ被告については触れなかった。 記者から「もう一方の原告のかたの状況は」と問われ、小川隆太郎弁護士は「報道通りの状況しか知らないので、それ以上はコメントできない」と回答。「原告が逮捕、起訴されているのに確認していないのか」との質問に対しても、複数の弁護士が「今回の判決とは関係ないので」などと繰り返した。 一方、デニズ被告の国会議員の支援者の一人で、立憲民主党の石川大我参院議員も取材に対し「報道は承知しているが、事実関係を把握していないためコメントできない」と文書で回答した。 デニズ被告は2007年にトルコから来日、難民認定申請が認められず、入管施設への収容と、収容を一時的に解かれた仮放免を繰り返している。弁護団によると現在も難民申請中で仮放免中という。

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