国際刑事裁判所(ICC)は8日、アフガニスタンで成人女性や少女を迫害した疑いがあるとして、イスラム主義勢力タリバンの幹部2人に対して逮捕状を発行した。 オランダ・ハーグに本部を置くICCは、タリバンの最高指導者ハイバトゥラー・アクンザダ師と、最高裁判所のアブドゥル・ハキム・ハッカニ長官について、2021年にタリバンが権力を掌握して以降、成人女性や少女に対して人道に対する罪を犯したと信じるに足る「合理的な根拠」があると述べた。 この2人は、12歳以上の少女の教育を制限し、女性の多くの職業への就労を禁止するなど、一連の制約をアフガニスタンで導入してきた。 これに対し、タリバンはICCを認めないと表明し、逮捕状は「明白な敵対行為」であり、「世界中のイスラム教徒の信仰への侮辱」だと非難した。 ■国連は「ジェンダー・アパルトヘイト」と非難 アフガニスタンでは現在、女性が男性の付き添いなしに移動できる距離が制限され、公の場で声を上げることも禁じられている。 ICCは声明で、「タリバンは国民全体に対して一定の規則や禁止事項を課しているが、特に成人女性と少女を、そのジェンダーを理由に標的とし、基本的な権利と自由を奪っている」と述べた。 国連はこれらの制限について、以前から「ジェンダー・アパルトヘイト(隔離政策)」に相当すると表現している。 一方、タリバン政権は、アフガニスタンの文化とイスラム法の解釈に基づき、女性の権利を尊重していると主張している。 アクンザダ師は2016年にタリバンの最高指導者に就任。2021年8月にアメリカ主導の外国部隊がアフガニスタンから撤退して以降、「アフガニスタン・イスラム首長国」の指導者を務めている。1980年代には、旧ソヴィエト連邦の軍事侵攻に対抗するイスラム主義勢力に参加していた。 ハッカニ長官は、タリバンの創設者ムハンマド・オマル師の側近であり、2020年にはアメリカとの交渉においてタリバン側の代表を務めた。 ICCは、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪に関与した疑いのある人物を捜査・訴追する機関。各国の当局が訴追できない、あるいは訴追しようとしない場合に介入する。 ただし、ICCは独自の警察機構を持たず、逮捕の実行は加盟国に依存している。 今回のタリバン幹部2人に対する逮捕状発行の可能性は、ICCのカリム・カーン主任検察官が今年1月に初めて言及していた。カーン氏は当時、幹部2人が「アフガニスタンの少女や成人女性、またタリバンのイデオロギーが求めるジェンダー・アイデンティティー(性自認)やジェンダー表現に適合しないと見なす人々、そして成人女性や少女の支援者と見なす人々に対する迫害に、刑事責任を負っている」と主張していた。 タリバンの外務省はこれに反発し、ICCが「外国軍とその現地協力者による多数の戦争犯罪や人道に対する罪」に見て見ぬふりをしてきたと非難した。この外国軍とは、2021年以前にアフガニスタンに駐留していたアメリカ主導の部隊を指している。 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、タリバン幹部2人に対する逮捕状発行は望ましい動きだとした。 同団体はICCに対し、「他のタリバンによる人権侵害の被害者、そしてイスラム国ホラサン州(ISKP、アフガニスタンで活動する武装勢力イスラム国系組織)」、旧アフガン治安部隊、アメリカ軍関係者による被害者にも正義の手を差し伸べるべきだ」と呼びかけた。 HRWは声明で、「アフガニスタンにおける暴力と不処罰の連鎖に対処するには、すべての加害者から被害を受けた人たちが平等に正義へアクセスできることが必要だ」と述べている。 (英語記事 ICC issues arrest warrants for Taliban leaders for persecuting women and girls)