1986年に福井県福井市で中学3年の女子生徒が殺害された事件で、殺人罪に問われ懲役7年の実刑判決が確定し服役した前川彰司さん(60)=同市=の裁判をやり直す再審公判の判決が7月18日、名古屋高裁金沢支部で言い渡される。前川さんは福井新聞の取材に応じ「(18日が)近づいてきて徐々に気になりだしたが、いつもと変わらない日常を淡々と過ごしている」と落ち着いた表情で語った。 逮捕されてから38年余り、「心の中に空虚さだけが漂うのは否めない。ただ、これから人生を歩んでいく中で、人との輪や世間との調和を養っていきたい」との思いを口にした。 裁判や再審請求審を振り返り「私は先頭を切って闘ってきたわけではない」と話し、支援者や弁護団、冤罪(えんざい)事件で活動を共にしてきた全国の仲間に対し「力を与えてくれた。本当に感謝している」と述べた。 長く苦しかった日々を思い出し「苦は楽の種。運命の日には花を咲かせたい」と笑みを浮かべた。 前川彰司さんの再審公判は、複数の関係者が「(事件当日に)血を付けた前川さんを見た」と証言した供述の信用性が最大の争点。再審初公判で検察側は有罪主張を維持する一方、新たな証拠は提出しなかった。再審請求審までの証拠で結論が出るため、前川さんは無罪が確実視されている。判決公判は午後2時から2時間半の予定。 前川さんは事件の翌87年に逮捕され、一貫して無実を主張。90年に一審福井地裁で無罪判決を受けたが、95年に二審高裁金沢支部で懲役7年の逆転有罪判決を受け、その後確定した。第2次再審請求審で高裁金沢支部は昨年10月、有罪の根拠となった関係者供述の信用性を否定し、再審開始を決定した。検察は異議を申し立てず確定。今年3月に再審初公判が開かれ、即日結審した。