39年前の福井・女子中学生殺害事件、再審無罪 懲役7年確定し服役

福井市で1986年に女子中学生を殺害したとして、懲役7年の判決が確定して服役した前川彰司さん(60)の裁判をやり直す再審で、名古屋高裁金沢支部(増田啓祐裁判長)は18日、前川さんを無罪とする判決を言い渡した。2度目の再審請求で287点の証拠が新たに出され、主要な目撃証言が崩れた。 検察の証拠開示に左右される再審のあり方が問われた形だ。検察側は今後、最高裁に上告するか検討するとみられる。 前川さんは86年3月19日夜、自宅で留守番をしていた女子中学生(当時15)を包丁で刺したなどとして逮捕・起訴され、「面識もない」と無罪を主張。物証がないなかで、「事件の夜、血の付いた前川を見た」という知人男性ら6人の証言が焦点になった。 90年の一審・福井地裁判決は、男性が「血の付いた衣類のある場所」の説明を二転三転させたことや、事件後に前川さんが乗ったという車から被害者の血痕が見つからないことなどを重視。証言は信用できないとして無罪を言い渡した。 だが二審は「男性らの供述の大要は一致している」として逆転有罪とし、97年に最高裁で確定した。1度目の再審請求で2011年に開始決定が出たが、検察の不服申し立てを受け、高裁が覆した。 22年の2度目の請求では、裁判官の要請を受けて検察側が捜査報告書など計287点を新たに開示した。これによって「前川さんを目撃した日」の裏付けとされたテレビ番組の放映日が1週間ずれていたことなど、検察の主張と矛盾する事実が相次いで明らかになった。 高裁支部は昨年10月、検察官が放映日の違いに一審で気づきながら事実に反する主張を続けたことや、証言した1人に警察官が結婚祝いを渡していたことなどから捜査機関の姿勢を批判。目撃証言を誘導した疑いがあるとして再審開始決定を出し、確定した。

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