特殊詐欺に関与したとみられる日本人29人がカンボジアから移送され、逮捕されました。カンボジアではいま、多くの日本人が詐欺拠点にリクルートされているといいます。中には「日本人の需要が一番高い」と語るブローカーも。実態を取材しました。 20日夜、愛知県の中部国際空港。 記者 「午後7時前です。カンボジアから移送された日本人が中部国際空港の到着ロビーに出てきました」 捜査員に連行される日本人の男女。その多くが顔を下に向けています。洋服で口元を隠す男や手で顔を覆う男。一方、別の男はカメラに目線を向ける様子も。 記者 「詐欺に関わった後悔はありますか?被害者への気持ちを一言」 記者の問いかけには誰も答えません。中には、10代の少年も… 記者 「少年3人が到着ロビーに出てきました。ブルーシートで覆われていて、その姿を確認することはできませんが、サンダル姿や黄色いスーツケースを確認することができます」 逮捕された10代から50代までの日本人の男女29人。警察官になりすまして電話をかける、いわゆる“かけ子”として、特殊詐欺に関与したとみられています。 記者(19日) 「捜査員およそ80人がカンボジアに向けて出発します」 愛知県警は、詐欺拠点から帰国した男性の証言をもとに捜査を進め、80人の捜査員をカンボジアに派遣。 記者 「日本人29人を乗せたバスが入管施設から出てきました。空港へと向かっています」 身柄が引き渡された29人は20日朝、カンボジアの空港に到着しました。 記者 「容疑者がバスから降りて出てきているようです」 ひとりひとりバスから降りてきます。29人全員が降りるまでかかった時間はおよそ5分。海外から一度に移送される人数としては、過去最大規模です。 カンボジアを拠点とした特殊詐欺事件。現場に向かうと、その実態が見えてきました。 タイとの国境に近い北西部ポイペト。 記者 「アパートのような建物がずらりと並んでいますが、実はこの奥にもたくさんの共同住宅があって、1000人近くが生活しているそうです。この敷地で日本人らが拘束されました」 周辺は、中国系のカジノホテルなどが立ち並んでいます。詐欺拠点は中国系の組織が管理していて、近くの住民によると、地元の警察とも密接な関係があったといいます。 地元の住民 「地元の警察幹部が所有する土地で、警備員が厳重に監視している。部外者は入れないし、怖くて近づけない」 29人は中国人らの指示のもと、日本人をターゲットに警察官を装った詐欺の電話をかけていたとみられています。 5月に現地当局が捜査に踏み込んだ際には、大量のスマートフォンや、警察官の制服のようなものなどが押収されたということです。 カンボジアではここ数年、日本の暴力団や「トクリュウ」と呼ばれる犯罪集団が関わる詐欺拠点の摘発が相次いでいますが、特に最近は、中国系の犯罪組織が日本人を詐欺の「かけ子」などとして集めているケースが増えているとみられています。 これはJNNが入手した、日本人がカンボジアの詐欺拠点に“リクルート”されている映像。 詐欺拠点にリクルートされる日本人男性 「食べ物とか飲み物を買いに行きたいんです。俺ひとりで行っていいのかが分かんないので、ちょっと聞いてみて」 40代の日本人男性が、中国系組織の関係者と報酬や生活の条件を交渉しています。 中国系エージェントからの依頼で、この男性を斡旋したというタイ人のブローカーに話を聞くと… 日本人男性を斡旋したタイ人ブローカー 「中国人の投資家が彼を紹介してくれて4万5000ドル(約660万円)で取引した。彼はギャンブルでお金がなくなり、詐欺を働くようになった」 取材したブローカーは、詐欺のノルマを達成できない日本人が詐欺集団の支配下に置かれ、別の拠点へと売り飛ばされる、“人身取引”のようなケースも存在すると話します。 日本人男性を斡旋したタイ人ブローカー 「日本にはお金を持っている高齢者も多くて詐欺に引っかかりやすい。だから日本人の需要が一番高い」 一方、別の中国系詐欺組織から先月逃げてきたというタイ人は、“同じ拠点におよそ15人の日本人がいた”と証言しました。 中国系詐欺集団の拠点にいたタイ人 「(日本人は)詐欺に成功すると必ずパーティーを開いていた。彼らは大量の現金を持っていて驚いた。金が尽きるまで宴会をしたり、高価なものを買いに行ったりしていた」 特殊詐欺事件で逮捕された日本人29人。警察は実態解明を進めることにしています。