米ジョージア州における現代自動車・LGエナジーリューションのバッテリー工場の建設現場で、米国移民当局によって逮捕された韓国人労働者300人余りが11日(現地時間)に釈放され、チャーター便を通じて12日午後帰国する。米国移民当局が自国の製造業復活政策に沿って投資した韓国企業の労働者たちを、襲撃を彷彿とさせる形で逮捕し、手錠と鎖までかけて連行した今回の事件は、韓米関係に大きな傷と課題を残した。特に、韓国人に対するビザ制度に改善がない限り、投資は不可能であることを明確に示した。 韓国と米国は今回の事態を機に、ビザ制度の改善協力に向け、外交部と国務省との間に作業部会を立ち上げ、韓国の専門技術人材のための新たなビザのカテゴリーを作る案などを速やかに協議することにした。米国土安全保障省も議論に参加するという。 チョ・ヒョン外交部長官は10日(現地時間)、アンディ・ベイカー大統領副補佐官兼副大統領補佐官(国家安全保障担当)に会い、今回の拘禁事態を目の当たりにした韓国国民の衝撃について説明し、ビザのカテゴリーの新設など再発防止に向けた韓米の作業部会の協議開催に集中していこうと呼びかけた。 韓国外交部によると、ベイカー副補佐官も「大規模な対米投資が現実化しているが、現在のビザ制度はこれを支えることができなかった」とし、今回を機に韓米協議など後続措置を積極的に推進していく方針を示したという。 チョ長官はこれに先立ち、マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障担当)との会談でも、「トランプ政権の米国製造業復興の努力に貢献する目的で、技術とノウハウを伝授するために米国に来た韓国の労働者たちが連行される過程が公開され、韓国国民皆が一様に大きな傷と衝撃を受けたことに対して、深い懸念」を伝えた。また、類似した事例の再発防止のため、新たなビザのカテゴリーを作ることを含む多様な案を議論するため、韓米外交部と国務省の作業部会の新設を提案した。 ルビオ長官はこれに対して「ドナルド・トランプ大統領は、韓国側が望む通りできるだけ早く協議し措置するよう指示した」とし、迅速な後続措置のために協力していこうと述べたという。 チョ長官はまた、この日ワシントンの駐米大使館で取材陣に会い、韓国の専門技術人材のためのビザのカテゴリーの新設問題とについて「国務省と外交部の間で作業部会を立ち上げ、新たなビザを作ることに向けて速やかに協議していくことまで再度確認した」と繰り返し述べた。 外交部のイ・ジェウン報道官はこれについて、「ビザ関連の作業部会について、現地で開催された韓米外相会談で取り上げられ、今後も実務レベルで協議を続けていく」とし、「原則的に米国も同意したと聞いている」と述べた。 強硬な移民政策を打ち出しているトランプ政権がビザ制度改善の必要性に共感したのは、韓国の対米投資に圧力をかけている状況を踏まえたものとみられる。特にトランプ大統領は、今回の拘禁事件が韓国企業の対米投資に及ぼす影響に注目し、拘禁されていた韓国人が出国せずに残って働くという案も勧告したという。 米国に投資する韓国企業にとって、ビザ問題は長きにわたる課題だが、二つのチャンネルで解決策を見出すものとみられる。一つ目は、今回韓米が合意した作業部会などを通じて迅速に短期的な解決法を模索する方法だ。外交部当局者は「作業部会の議論などを通じて、米国に投資した企業が不利益を被らないよう講じられる措置を米国と話し合っている」とし、韓国人専門職のためのビザ(のカテゴリー)を新設する案と共に、従来のビザで仕事ができる範囲などを確実にするガイドラインを作る案なども議論しうると語った。 二つ目は、米国議会に発議されている「韓国パートナー法」(Partner with Korea act)の可決を後押しすることだ。韓米は2007年に自由貿易協定(FTA)を締結し、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2012年に韓米議会の批准を受けて発効させた。ところが、ここには韓国人に専門職ビザを発給する内容が抜けている。米国とFTAを締結した他の主要国が、年間一定数の専門職ビザの割り当ての保障を明示しているのとは異なるため、この問題はこれまで議論になってきた。 カナダとメキシコは毎年、無制限に米国の専門職ビザ(E4)を発給してもらうことができ、オーストラリア(1万5000人)とシンガポール(5400人)、チリ(1400人)なども割り当てがあるが、韓国には該当事項がないためだ。このため、就業ビザを取得するのが難しい韓国企業が、これまで便法として電子旅行許可(ESTA)や短期商用ビザ(B1、B2)を使って職員を出張に送り、今回の事態が起きたのだ。 米議会では、韓国人が毎年専門職ビザ(E4)1万5000件の発給を受けられるようにする「韓国パートナー法」が発議されてきた。2013年に初めて発議されたこの法案は、これまで7回発議されたが、毎回議会の敷居を越えることができず、廃棄されてきた。 同法案発議のために努力してきた米州韓国人有権者連帯(KAGC)のキム・ドンソク代表は、ハンギョレの電話インタビューで、「今回の事件を機に、韓国政府がビザ問題の根本的解決策である韓国パートナー法が可決されるよう、米国政府と議会を積極的に説得するための外交的努力を傾けなければならない」と強調した。キム代表は「米国内で『移民者拡大』に反対する声が高まっているが、トランプ大統領が慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席するために訪韓し、韓米首脳会談を通じて韓国人専門職ビザ割り当ての拡大と造船業協力の進展などの成果を作り出すことができれば、法案の可決も可能だ」と提案した。 パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ [email protected] )