機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)をめぐる冤罪(えんざい)事件について、警視庁トップの迫田裕治警視総監は19日、東京都議会の警察・消防委員会で「捜査により多大なご心労、ご負担をおかけした皆様、警視庁を支えていただいている都民、国民の皆様に改めて深くおわびを申し上げる」と陳謝した。 迫田氏は検証報告書をまとめた8月7日にも記者会見で、逮捕された社長ら3人や被告のまま亡くなった顧問の遺族に向けて謝罪の言葉を述べた。警視総監が特定の事案をめぐり公の場で繰り返し謝罪するのは異例だ。 委員会では、警視庁の鎌田徹郎副総監が捜査の問題点を説明。捜査を指揮した警視と警部が「捜査上のマイナス要素に十分に注意を払わず捜査を進め、部下の進言に正面から向き合わなかった」などと述べた。幹部が確実にチェック機能を果たせる体制整備などの再発防止策も紹介した。 冤罪事件をめぐっては、国と都に賠償金計約1億6600万円の支払いを命じた東京高裁判決が6月に確定。判決では警視庁公安部の捜査や逮捕、東京地検の起訴について、一審に続いて違法性を全面的に認めた。警視庁は検証を実施し、8月に報告書を公表していた。(松田果穂) ■大川原化工機冤罪(えんざい)事件 軍事転用可能な機器を中国に不正輸出したとして逮捕・起訴され、長期間勾留されたのは違法だとして「大川原化工機」(横浜市)の社長らが国と東京都に賠償を求めた訴訟で、東京高裁は2025年5月、捜査を尽くさず逮捕・起訴したのは違法などと認定し、国と都に計約1億6600万円の支払いを命じた。裁判では、捜査に携わった警視庁公安部の現職警察官が、事件を「捏造(ねつぞう)」などと証言した。判決は6月に確定し、警視庁と東京地検が社長らに謝罪。警視総監も記者会見を開いて、陳謝した。 事件をめぐっては、同社顧問だった相嶋静夫さんが勾留中に胃がんが見つかり、繰り返し保釈を求めたが認められず、被告のまま72歳で亡くなった。(松田果穂)